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小説「召喚と召還の結末」
切り替わり
確かな戦略と高い士気。

この二つがあれば、大概の戦は有利に進む。


だが、このサザーランには、確かな戦略を立てる軍師はなく、頼みの綱の士気力も、低下の一途。



(これは…絶好のチャンス…か)


父親は、そう思った。








親子は待たせていたバル達と合流した。



「で、どーすんです?」
バルが、そう聞くと、父親は。

「カリス。あいつらを集めろ」
と、言った。
すぐに、カリスは答える。

「了解しました。ですが、全員ですか?」
すると、その言葉で、父親の雰囲気が、ガラリと変わった。


「…あぁ、今回は戦いを楽しむ事より、利益を優先させる。全員、このサザーランに集結させろ」

それは、命令する事に、慣れた声音。

そこに居るのは、子供を愛する父親ではなく、人を支配し、使う事に慣れた一人の男。


父親の纏う空気が変われば、バル達の纏う雰囲気も、一変する。


辺りの空気が、一気にピシッと引き締まる。


「カリス。とりあえず、お前は、使者として城へ向かえ」
「はい」
「バル。お前は俺と来い」
「了解」

そこに居るのは、上官と部下。


もはや、先程までの気安さは無いに等しい。

そして、こうなった父親は、大事な息子の扱い方すら違ってくる。



おもむろに、息子の襟首を掴むと、自分の目の高さまで持ち上げ。


「グレイブ。お前は、とりあえず安全な場所に居ろ」
と、言った。

なんと、アバウトな親だろう。


しかし、息子は動じず、平然と聞く。
「父ちゃん。ちなみに、何処なら安全?」

しかし、この時の父親には、聞くだけ無駄である。
「なもんは、知らん。適当に自分で見つけろ」
と、なる。


普通、年端もいかない子供が、親からこんな、言い方されたら、泣くだろう。


だが、息子の方にしても、この扱いは毎回の事なので、慣れたモノ。

「りょーかい。全力で、安全な場所に居るね〜」

と、簡単に答える。

「じゃ、行け」
「あい!」

すぐに、走り出す息子。


見送る目には、温かさは皆無。

しかし、その姿が視界から完全に消えるまで、息子を見続けた。


切り替えてはいても、その扱いが違っても、根本的に、息子を思う気持ちは同じ。


息子が完全に、視界から消え去るのを確認し。
「行くぞ…」

と、父親は言った。





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