小説「召喚と召還の結末」
5
だが、契約だろうと支配だろうと、何かを対価にしなければならないのには違いはない。
契約と支配。
それは力という絆で結ばれた関係。
だが、契約は互いに、約束事を交わし、その約束事を片方が破った場合のみ無条件で、絆を解除出来るが、支配は支配した側からしか絆を解除出来ない。
今、目の前にセラが居ないのは、彼女が対価をすぐに要求する気がないからだと、ブラックは考えた。
ならば、対価を取りに来る日までは自由だろうとも考えた。
だが、自由だからと何をすれば良いのだろうと、思った。
暫く考えていると、ブラックの頭に、剣の師匠とも呼べる男の言葉が蘇る。
狂気に魅入られ、壊れていた男の言葉。
「その剣で、この理不尽な世の全てを壊してくれ」
力なき者の言葉ほど、空しいものはなく、力を持たない者の言葉は、力を持った者には届かない。
為政者の欺瞞に満ちた世界。
ブラックの頭に、精気を失い、死を願った者達の顔が浮かんだ。
このまま力を得なければ、何もしなければ、また彼等の様な存在に成り下がる。
それだけは絶対に嫌だ。
ならば、どうするか?。
そう強者になれば良いのだ。
この世界は、弱肉強食なのだから。
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