小説「召喚と召還の結末」
3(注意:グロテスクな流血表現あり)
「この生を変えてくれるなら、どうなろうと構わない」
と、口にした。
その言葉を聞いたセラは先程よりも、更なる甘さと艶やかさを潜ませた声音で、言葉を口にする。
『本当に良いのね?』
「あぁ…」
『背徳と混沌を背に、イリアスとカーの名の元に、汝は血を示し、汝の対価を払うがよい』
言うなり、振り上げられる手。
静かに目を閉じ、セラの前へと座り込んだ。
その次の瞬間。
「グッぅ゛ッ!!」
襲い来る激痛に、出来るだけ声を殺す。
セラの腕は彼の胸を貫き、白く細い手が心臓をえぐり出した。
ーードック、ドックーー
心臓は、力強く鼓動する。
しかし、耐え切れずに絶叫する。
「ガァ゛ァ゛ァァーっ!!ア゛アアアァァアァ゛ー!!」
セラは心臓を引きずり出しただけではなく、脈打つ心臓へと深く爪を立て、流れ出る鮮血を啜り、その肉を噛んだ。
永遠にも等しい苦痛が襲う。
だが、彼女にしてみれば、一時の恍惚。
口元を血でべったり濡らし、爛々と目を輝かせながら、セラは宣言する。
『汝の血と肉は、名を授けるに見合う対価がある。汝は今から、ブラックと名乗るがよい。深淵を覗きし者よ』
ーーブラックーー
それは過去を捨てる決意をした事で、与えられた新たな名前。
意外な事に、激痛と多量の出血で意識が遠のきながらも、その名前は違和感なく身体に浸透し、まるで生まれた時からその名前で呼ばれているかのような気すらした。
ブラックは、その後。
すぐに意識を失った。
普通ならば、死んでもおかしくない深手。
だが、ぽっかりと空いた傷は、セラが手を翳しただけで、簡単に消え去り、後には多量の血痕だけが残された。
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