小説「召喚と召還の結末」 2 胸の中で燃え盛る暗い色の炎。 絶望は憎悪へ。 信頼は殺意へと変り果てた。 全てを奪われ、汚泥の底に捨てられ、この世に居ないモノとして扱われて、彼の精神は闇の底へと沈みかけていた。 危うい均衡。 いつ崩壊し、破滅に向かうか誰にも分からなかった。 だが、ある時。 妖艶な笑みを浮かべた人外の者が現れた事で、人生は変革を迎える。 その人外の者。 強き光りを放つ黒耀の瞳に惹かれた。 『私の名はセラ。さぁ、貴方はなんて名なのかしら?』 と、甘やかで艶やかな声音で囁く。 深緑の髪をした女の姿を取ったその者に、静かに答えた。 『名はない』 その途端、セラと名乗った女は愉快そうな表情を浮かべ。 『ふふふっ…ならば、私が貴方に名を与えましょうか?貴方、この意味、分かる?』 と、問う。 それに、静かに頷く。 自分は否応なしに世界を放浪している身の上。 だから、知っている。 人外の者に名を与えられるという意味も、逆に名を告げる意味も。 だが、先に待つ未来を知りながら。 [*前へ][次へ#] [戻る] |