小説「召喚と召還の結末」 3 そんな夫に、妻アリエラは、淡く微笑み。 「私は…元々、この国の王女として生まれた女です。生まれた国と共に滅ぶのに、なんの躊躇いがありましょうか。本当なら…あなたこそ、逃げても良いのですよ?」 と、言った。 すると、途端に王は顔をしかめ。 「馬鹿を言うな。私が君を置いて逃げるなんて、出来る訳が無いだろ」 そう言うや、アリエラを強く抱きしめる。 「ありがとう…あなた…」 抱きしめられたアリエラは、泣き笑いの表情を浮かべた。 この夜、二人は明け方近くまで、寄り添いあっていた。 そして、夜明け前、国が滅ぶ時は、共に死のうと誓い合った二人であった。 確たる策もなく、ただ時間ばかりが過ぎる中。 もはや、どう戦っても敗れるだろう事は明白。 それも、大敗すると分かっているから、自然と兵の士気も下がっていた。 だが、サザーラン国に、ある集団がやってきた事で、戦局は一変する事となる。 「父ちゃん。この国なんか、暗いな…」 父親らしき男の足にしがみつき、そう言った一人の子供。 その言葉に、答える様に、隣を歩いていた男が子供の頭を撫でながら。 「…あぁ…こりゃ、暗すぎだろ。まともに、商売にならんかもしれんぜ?」 と、言った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |