小説「召喚と召還の結末」
2
息を吐き出すのも辛いはずなのに、尚も友は言葉を紡ぐ。
『最後だ…一つ…お前に、教えといて……やるよ。…目に見える…モノだけが、全てじゃない。……俺が、お前に立ちはだかった理由は…それだ』
その言葉を最後に、友は静かに息を引き取った。
次第に、身体から温かさが消え、冷たくなっていった友。
いつだって、庇われてきた。
いつだって、助けられてきた。
この友は。
『ちゃんと自分でも、考えろよ』
いつも、そう言って、苦笑いを浮かべ、短慮な所のある自分を嗜めて、忠告してくれた。
でも、そんな事を言ってくれる存在は、もう居ない。
友を殺し、その後、友の大事な者達を何の罪も無い存在を殺した自分。
人々から救世主と崇められても、今だ消えない痛み。
自分にとって、悪夢でしかない夢は、いつも、ここで終わりを迎える。
「俺は、どうすれば良かった?…」
思わず、漏れた言葉。
しかし、分かっている。
もう、誰も自分の問いに、真に答えをくれない事を。
もう自分は、選んでしまった。
決して、過去には、戻れない。
犯した過ちは消えない。
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