小説「召喚と召還の結末」
『ヒュプノス』
その門と、その先に建つ城を見るのは、これで二度目の事だ。
あの頃は、何も知らされずに、問答無用で追い出された。
あの時から、数十年が経った。
またこの国に来る事を選ぶとは、過去の自分では思いもしなかった事だろう。
この国の連中を助けようとする自分が不思議だった。
あの頃から、全てが変わり、自分には、かつての面影を見る事は出来ない。
恐らく、誰も自分をあの時の存在だと、気づかないだろう。
かつて、自分達が犯した過ちも、罪も、全てなかった事にして過ごしているのだろう。
怒りを抱くには、時間が経ち過ぎた。
だが、奴等の過ちと罪を許す気になる程の時間が経っている訳ではない。
「団長。如何なさいましたか?」
遠い目をして、門を眺める男に、気遣わしげな声が掛かる。
「いや、何でもない…リーア。あれ以降、城からの返答は?」
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