小説「召喚と召還の結末」
後悔
過去。
人には、過去を変える様な大きな力はない。
だが、もしも。
過去を変えられる様な力が有ったなら。
彼には変えたい過去がある。
夢に見る。
何度も、自責の念が見せるのだろう過去の光景。
そこは戦場。
剣を持ち対峙した二人の男。
片方の男からは傷口から、血が止まることなく流れ出ていて。
それだけを見れば、もう一方に軍配があり、勝敗は決まった様なものに見える。
だが、もう一方の男も、辛うじて、致命傷を避けているものの、傷を負っている事には違いなく、また疲労の色も濃く顔に出ていた。
それに、もう一方の男は、対峙する相手へと迫り来る死を感じ取り、言いようのない恐怖を感じ、迷っていた。
争いたくなんてなかった。
けれど、友は自分の敵となった。
戦う相手が友だと気づいた時。
もはや、退く事など出来なかった。
どちらかが、どちらかを倒さなければ、この争いは決して終わらないと、分かっていた。
自分には、自分の帰りを信じて待つ人がいた。
その人の為に…勝たなければならなかった。
次の一手で、全てが決まると、分かっていたが勝たなければ!と思う気持ちと、友を前に鈍る決意に自分は揺れていた。
だから、振り上げられた剣を前に、一瞬だけ反応が遅れた。
ー斬られる!ー。
そう感じた瞬間、やみくもに振り払った剣。
本来なら、当たる筈のない動き。
「っ!?」
「グァっ…」
なのに、手に伝う肉を貫く感触と、聞こえてきたうめき声に、驚く。
本来なら、その場に立っているのは自分ではなく、友の筈なのに。
立っていたのは。
「な、なんでっ…!!」
「ハァっ…ハァ…」
自分だった。
友は土壇場で、剣を引いたのだ。
引いた先に待つのが、自分の死だと分かっていた筈なのに。
彼は笑っていた。
『俺に、お前は倒せねぇよ。良いか、ここで泣くなよ…お前は、あの姫さんを守るって、決めたんだろ?なら、敵の死で泣くんじゃねぇ』
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