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小説
子供と子供
さて、今日は12月25日。
世間でいうところのクリスマスだ。

あちらこちらで羽目を外す輩が増える、僕にとっては草食動物狩りの日。

「――でさ、骸ってば信じらんないこと言うんですよ。って、ちょっと雲雀さん!!ちゃんと聞いてます!?」
「……聞いてるよ、綱吉」

だけど、そろそろ昼を回るというのに、僕は今だに応接室にいる。
仕事に就けずにいる。
足止めをくらっている。

「俺、もう骸に愛想尽きちゃってさ。一発KOして、そのまま家を出てきたんです!!」

頬を可愛らしく膨らます、この沢田綱吉によって――……

僕は溜め息を吐きながら、今までの綱吉の話しをまとめてみた。

「要するに……君はクリスマスケーキといえば、苺の乗った生クリームの王道ケーキ。だけど六道の奴はチョコレートケーキが良いと言い張ってる。それで口論になって、喧嘩になって、KOしてきた……と?」
「そうです!!」
「……」

鼻息荒く。
清々しい程に堂々と。
"そうです"と言い切る綱吉。

僕の頭の中に浮かぶ言葉はただ一つ。

馬鹿。

そうこうしている間にも、並盛の秩序は確実に乱れていってる。

だけどここで綱吉を放っておくと、情けない話し、後が怖い。
機嫌を損ねた瞬間にKOされる。
六道の二の舞だ。

僕が頭を抱えたい衝動を押さえ付けているとドアが乱暴に開かれる。

「ちょっと聞いてくださいよ、雲雀君!!綱吉君ったら信じられないこと言うんですよ!!」

あぁ…こんなこと思うなんて柄じゃないのは分かってる。
分かってるけど思わずにはいられない。

神よ何故だ――……?

互いに存在に気付いた二人。

「骸!?」
「おや、綱吉君!?」

そして次の瞬間、

くたばり果てろ!この、腐れナッポーが!!!!

繰り出された高速の拳。

脊髄反射のように。
光の速さのごとく。

骸の鳩尾に向かって、的確に、正確に、一寸の狂いなく、その拳を、叩き込み、めり込ませ、埋め込んだ。

声もなく吹き飛ばされる六道。

「どの面下げて俺の前に現れてんだよ、邪道を極め尽くしたお前が!!」

怒鳴り散らす綱吉。

「!?」

だが、その表情が変わる。

綱吉の周りを囲むように霧が集まり、蓮のツタが綱吉の細身を締め上げた。

「ッうぁあ!?」
「く、ふふふ…僕が毎回やられっぱなしでいると思っていたのですか、綱吉君?本当に甘い男だ……」

吹き飛ばされた方向から、六道が姿を現す。

……あれで気絶しなかったのか?

「ッッくそ!!さっきのは幻覚か!!」
「正しくは有幻覚です。流石の君でも、すぐには気付けなかったようですね。」
「……」

ちょっと待て。
待て待て待て待て待て待て!!

何でこんなバトルになってる!?
何この、どっちかが死にそうな勢いは!?

僕は早く街に……

「さぁ、観念なさい、綱吉君。クリスマスケーキはチョコレートにしましょう。」

秩序を正しに……

「ふざけんな!!クリスマスにチョコケーキなんて邪道もいいとこだ!!生クリームに苺!!それ以外をクリスマスケーキなんて認めない!!!!」

プツン

――〜〜いい加減にしなよ、君達!!
「「!?」」

突然の僕の怒鳴り声に驚く二人。
だけどね、もう僕は限界だ。

クリスマスケーキはクリームかチョコレートか!?そんなことで普通こうなるわけ!?馬鹿じゃないの!?二つとも買えば良いだろ二つ!!両方!!ここまでする必要が何処にあるっていうのさ!!そんな馬鹿なことに付き合ってやる程僕は暇じゃないんだ。他所でやってよ!!

ここまでをノンブレス。
僕って怒鳴れるんだね、新発見だよ。

「……そう、か。そうですね……」

六道が呟くと同時に、綱吉を拘束していたツタが消えた。

「そうですよ、綱吉君!!」
「骸……?」
「僕は僕が求めるケーキを。貴方は貴方が求めるケーキを両方買えば良かったんですよ!!」
「そっ、か……別にクリスマスケーキは一つだけなんて決まりはないじゃんか!!」

二人は満面の笑みで僕を振り返る。

「「ありがとう(ございます)、雲雀さん(君)!!」」
「は?」
「行こっ、骸!!早くしないと売り切れちゃう」
「くふふ……そんなに慌てては転んでしまいますよ、綱吉君」

バカップルのような会話をしながら、立ち去っていく二人。
部屋に一人残された僕。

…………え?
散々すき放題したのに。
何だか廊下の壁にひび割れが見えるのに。

それだけ?

――ふっっっざけんなこの野郎!!



その日。
聖なる夜の日。
並盛からは悲鳴が絶えなかったという――…

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あきゅろす。
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