小説
お天道様を拝みたい(ヒバツナ)
冬が近付いているのだろうか。
そう思うこの頃。
外は土砂や霰が不規則に降り、冷え冷えとしている。
暖房でほどよく温められた応接室に、僕の最愛の人、綱吉が入り浸ることが多くなった。
「ねぇ恭弥」
さっきから外を眺めていた綱吉が僕を呼ぶ。
なんだい?と聞く代わりに視線を送ると、綱吉は窓ガラスから目を離さずに言った。
「最近、機嫌悪いの?」
「……何で?」
唐突すぎる質問。
質問に質問で返すのは些かどうだろうとは思ったが、他に言葉が浮かばなかった。
「いやさ、ここんとこ雨ばっか降ってるからさ。恭弥の機嫌でも悪いのかなー……なんて思ったの」
「どういう意味?」
「恭弥って雲の守護者じゃん。あんなに黒い雲が広がってるのって、恭弥が機嫌悪いからかなって」
「……」
流石の僕にもそんな人間離れした能力はないよ、綱吉……
それに――
「下らないこと考えてるんだね」
「そう?」
「下らないよ。だって僕は最近、機嫌が良いからね」
「そうなの?」
綱吉は軽く首を傾げた。
その仕種が。
心の底から何も理解出来ていない表情が。
素直で純粋な気持ちが。
鈍感なところが。
急に愛おしく思えた。
綱吉の側まで行き、亜麻色の柔らかい髪を撫でる。
「……恭弥?」
少し上目遣いに見上げてくる綱吉。
僕は吸い寄せられるように、顔を近付け――綱吉の小さな唇に軽くキスを落とした。
「き…ッ恭弥!?」
耳まで真っ赤にしながら、慌てふためく綱吉に、思わず笑みが零れた。
そしてもう一度言った。
「僕は機嫌が良いんだよ」
最近、君がここに入り浸っているからね。
独り占めしてるみたいで気分が良いんだ。
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