Honey Flower(本編+SS)
5
「やっ……だって、カイさまが聞いてくれない……から……やっ!」
カイさまは僕の腰を捕まえたまま、下着ごと寝間着の下衣を抜き取った。
白くて細い、頼りない両脚が露わになった。
(すうすうする…)
不安と恥ずかしさに、両膝を擦りあわせた。
カイさまは続けて、手にした下衣で、僕の両手首をまとめた。
手の自由が利かない。
言いようのない不安が湧いて、歯がかたかたと音を立てた。
「こんなの……怖い……えっ……う……」
カイさまは、泣き出す僕の頬に手のひらで触れた。
暖かい手のひらは、優しい。
「おまえがいけないんだよ、金木犀。おまえが俺を拒否するから」
首を横に振る。
拒否なんてしていない。
「だって…話を…」
擦りあわせた膝に、舌が触れた。
熱くて、思わず引いてしまう。
掴まれた膝から腿に舌が動いて行った。
「あ……あ……」
舌が生み出した感覚に、脚が震える。
怖い。
「銀砂って、庭作ってる青児(せいじ)の息子だろう? それがどうしたんだ」
「銀砂……と……」
一緒にいたい。
言おうとするのに、口が震えて思うように動かない。
カイさまはそんな僕の口に、指を滑りこませた。
丸い指先が、舌と内壁を撫でているようでくすぐったい。
「銀砂なら、おまえが心配なのか、庭にいたよ。気になるなら見てごらん」
ちゅる、と音を立てて指が出て行った。
唾液の糸を引く指が、部屋の出窓を指した。
僕の部屋と同じ方向に面した窓の外は、あの綺麗な庭園だろう。
「見ても……いいの?」
おずおずと聞くと、カイさまはあっさり、ああと返事をくれた。
「もう夜更けだ。銀砂が今いるかどうかはわからないよ?」
それでも構わない。
僕はカイさまのもとから離れて、出窓に膝をついた。
下衣のない腰が気になったけど、上衣が長いから平気だった。
硝子窓に指を添えて、覗き見る。
庭園や屋敷には、防犯用のライトが生き物のように光を動かしている。
時折、僕のいる窓も照らし出す光は一瞬で通り過ぎて、今度は庭園を走った。
(あ)
銀砂だ。
噴水のそばに腰を下ろして、この窓を見上げている。
一瞬で走り去る光に、庭園はまた真っ暗になって、銀砂を隠してしまう。
(でも、ちゃんといてくれた)
嬉しい。
次に光が窓を照らした時に、手を振ろう。
そんなことを考えていると、背後にカイさまが近づいているのに気がついた。
「カイさま。ありがとうございます。銀砂が、ほらそこに」
いたのか? と言いながらカイさまは僕の肩に手を置いて、庭園を覗き見た。
「暗くてよくわからないな。金木犀は目が良いんだな」
首の後ろに口づけを落とされた瞬間、眩しい光がよぎった。
(えっ……)
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