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Honey Flower(本編+SS)
2
 ポケットからシャーレを取り出す。
 黄色の水槽のそばにしゃがんで、注意深くヒメアメンボの体を掬いあげた。
 アメンボはぐったりとシャーレの底に横たわって、親指の爪ほどの水たまりを作っている。

「…………」

 立ち上がって、シャーレの底からガラスの天井を見上げる。
 水を蹴っていた足の繊毛の向こう側に、都真が命を与えた人工の蝶がひらひらと空を待っているのが見えた。

(アメンボを人工で動かすのは初めての試みだな)

 多分今日のうちに、蝶と同じく、アメンボはまた水面を滑ってくれるだろう。
 元のアメンボとまったく同じというわけではない。
 人工に作り出した、ただ動くだけの、生命とも呼べない代物だ。
 それでもやるしかない。

 ソウが許してくれるかどうかはわからなくても。
 下手を踏んだ都真としては、できる限りのことで許しをこうことしかできないのだった。

















【SS -Gerridae 了】

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あきゅろす。
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