Honey Flower(本編+SS) 8 開いたままのドアの前に、皓は両膝をついてうつむいた。 「皓……」 彼の震える肩を抱く。 皓はすぐに、私の腕にもたれるようにしてすがりついてきた。 体中がぶるぶると震えている。 「リン、俺はもう……描くのは辞めたい……」 「そんなっ。何を言うんです……」 シャツの胸元に、熱いしみが広がる。 皓の涙だと気づきながら、気づかないふりをして、彼の頭を両腕で抱いた。 「誰も求めていないものを作り続けて、いったい俺がしていることは何なのだろう……」 「違う。貴方の描いたものは求められます。少なくとも、私には」 こんな言葉が皓の心に届くとは到底思えない。 私などが皓の絵を欲してしても、それこそ何になると言うのだ。 皓の望みは私なんかではない。 もっと多くの人に望まれるような、そう、彼の言う『過去』にあったような、熱望。 それをこそ、皓はその手に握りたいと願っているのに。 [*前へ][次へ#] [戻る] |