聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
6
(何……)
肉を食んでいた最奥が、急に熱を失ったような気がして。
重い半身を起こすと、ゆっくり両膝を閉じた。
俯くと、傷だらけの脚に固まりかけた白濁がこびりついているのが目に入った。
膝に置いた手には、浮かんだ痣が血に汚れている。
いつの間にか、そばに制服姿の明石が膝を着いていた。
「明石……?」
ホンモノ?
子供じゃない、背の高い明石。
コクマの会議室で見た、聖王 森村明石。
それに、煙草をくわえてふらふら歩いていた眼鏡の生徒。
あれも、明石なんだって、聖王会の誰かが言ってたよね……
「……ああ……僕が子供じゃなくなったから、明石ももう子供じゃないんだね……」
特に感情を表すでもなく、明石は頷いた。
制服の上着を脱ぐと、色んなものに濡らされた僕の体に羽織らせてくれた。
一瞬、明石の指が、僕の頬を掠めた。
「汐は、やっぱり泣いてる顔が一番可愛い」
子供じゃなくなったのに、子供の時と同じことを言うんだね。
僕も、同じことを言う?
――明石、助けて。
まだ体が熱い。
甘い匂いがぷんぷんしていて、僕はまだ体中撫でて欲しがっている。
前も後ろも熱を抱いたまま、吐き出したくて疼いている。
目元に重く溜まっていたらしい涙が、すうと頬を流れた。
「聖王が……明石が、僕を襲わせたの?」
明石からの手紙。
来なかった明石。
影を従えた王軍長は、聖王の自在な手足だ。
ごくんと飲みこんだ唾液は、複雑な味をしていた。
「あの晩みたいに……明石が“みんな”を呼んだの……?」
――いい子にしてて、汐。
…………
……。
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