聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
5
息ができない。
両手で四つん這いの腰を掴んで、揺すぶられる。
苦しくて熱いのに、ずるりとした抜かれそうになる感覚に、思わず食いついてしまう内壁。
甘い匂いに溶かされて、擦られる快感を逃すまいと、勝手に動く肉を止める理性は消えかけていた。
僕の腿にぶつかっていた肉はやがて、短い痙攣と更に熱い飛沫をくれて、ずるりと力を抜いていく。
全身の力が抜けて、くたりと芝生に腰を落とした。
「ふ…うう…」
起きあがりたくない。
ひんやりした芝生に熱を移してしまいたい。
口元でぐじゅぐじゅと音を立てていた指を引き抜かれて、目の前に別の脚が腰を落とすのが見えた。
「こっちの口が退屈らしいな……」
その脚に、すがりついた。
背後では力の抜けた僕の腰を支えて、また別の肉が分け入ってくるのを感じる。
ぎゅっと押し広げられ、とろけた中を擦られると、下腹に蜷局をまいた甘味が頭の芯まで痺れさせた。
「う……ふぅ…んん……」
体の最奥を擦られながら、唇では別の熱を貪った。
後から後から出てくる雫を舐めとって、甘く噛んで。
痺れたように熱くなった舌でくるんで吸いつくと、誰かの手が僕の頭を鷲掴みにした。
自分で支えられなくなった体は、別の手が支え、撫でてくれる。
優しい指の腹や、固い爪先が、胸の赤を摘んで、つぶして、痺れさせてくる。
胸の尖りを固くしこらせながら、下腹を突く肉の熱さを感じた。
ぎゅっと絞ると、全部自分の中に取りこめる気がして。
次々に熱の飛沫を散らされ、飲みこんでは次を求める。
あの晩もその次の晩も、次の次の晩も、そうだった。
最初はたくさん血が出て、痛くて、本当に怖くてたまらなかった。
でも、最初の晩だけは明石がいてくれたから、最後は怖くなくなったんだよ。
『もう“みんな”は嫌なの……明石、助けて……?』
頬を流れる涙粒と、口腔で受けとめきれずに流れる落ちた白濁とが混ざりあい、顎を伝い落ちていく。
薄い白を混じらせた体液は、芝生の緑を汚していた。
頭の中は痺れたようなのに、過去と今とが、せわしなく交錯していた。
頭の中で、そこだけが切り取られたフィルムで、そして何の脈絡もなくつなぎ合わされ、映像化されているかのように。
気ぜわしい、走馬灯でも眺めているかのように。
濡れた僕の脚を、誰かが自らの腰で割広げて、肉同士のぶつかる音が、まだ聞こえる。
これは、現実……?
体を支える腕もだるくなって、芝生の上にひじをついて、誰だか知らない彼を受けいれていた。
名前も知らない。
顔も知らない、王軍の兵士。
月光が眩しいほどで、黒い綿を割いたような雲が対照的だった。
兵士の数は、最初に比べて少なくなっているように思えた。
その、少なくなった兵士を捕縛している兵士がいる。
(……?……)
みし、と軋んだ音がして、僕と繋がっていた誰かが仰向けに倒れた。
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