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聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
6
 ふと、半月ほど前、図書室で倒れている汐を見つけて抱き起こしたことがあったことを思い出した。

 貧血だと思った。
 慌てて「大丈夫だ」と言って離れて行った時も、遠慮しているのだと思って、特におかしいとは感じなかった。

(顔色が赤かった。まるで、上気したみたいに)

 空調管理された図書室は、それほど暑いとは感じなかった。

 聖風の夏の訪れは遅い。
 桜もつい先日、咲いたところだ。

 そういえば、汐を見つける前に、身を隠すように出て行った生徒がいた。
 だらしない着衣の乱れに眉をひそめただけで、特に気にも止めなかったが。

(まさか。考えすぎだ)

 すやすやと、さっきまでのことが嘘だったように寝息を立てる汐。

 ……目の前にいるのは、僕が知っている花井汐なんだろうか。

 それに、と汐のくせっ毛を撫でる。
 ステンドグラスに描かれた、天使と似たような髪だ。

 自失状態にあった汐がこぼした言葉たち。
 あれは何だったのだろう、事実なんだろうか。

(“明石”)

 汐のすべてが、彼に繋がる。
 おそらく、汐が言う明石というのは、聖王 森村明石に違いないとは思うが、確証は何もない。

 汐の髪から手を離して、バスルームに向かった。
 すべて流してしまおう。
 自らに湧いた邪心も情欲も、何もかも。











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あきゅろす。
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