聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
7
「では一週間、梅とそれぞれ独房で策を立てろ」
鷹宮さまの笑みが止まった。
どうやら鷹宮さまの作戦そのものは、ここまで続く予定じゃなかったみたいだ。
「えっ……間、聖王会家令業務は……」
すでに会議を終わらせようという心づもりか、聖王は手元に残っていたコーヒーをひと息に飲んだ。
話を続けようとする鷹宮さまを、面倒そうに見る。
「出てから追いかけろ。さしあたっての家令業務は『対策案を出すこと』だ。
ああそれから、高美」
「はいっ」
「尚書長にも一週間与える。家令の指示で尚書を発行した者を探し出し、王軍に突き出せ。今後、尚書院で不祥事を起こさぬよう尽力するように」
"不祥事"!
(とばっちりだ!!)
どういうことだよ!?
なんで、こっちにまで飛び火して!?
イライラと鷹宮さまを見やるも、向こうは向こうで裁きに納得できていないみたいで、表情を消している。
こういう鷹宮さまには、あんまり関わらないほうが身のためだ。
だけど、だいたい今回の件は、鷹宮さまと東原王軍長が先走ったのが発端で……
(あれっ)
裁きが下ったことで、鷹宮さまが苛つくのはわかる。
東原王軍長が、静かすぎるんだけど。
恐る恐る視線を上げると、存外にも平然とした顔をしている東原王軍長が、聖王に向き直っていた。
「陛下がそう下すなら、俺はそれで良い」
えーっ、何それ。
急に従順めいたセリフ吐いて、何のつもり!!
「それで"姫"の件だけど。全員の意見が、聞いてみたい」
うわあ。
またそれを蒸し返すがために、裁きに甘んじるというわけか。
東原王軍長は妙に真摯な眼差しで、聖王を見つめている。
(まぁ……聖王が汐ちゃんに興味を持っているのは確かだし。でもって、東原王軍長が聖王を好きっぽいっていうのは見ててわかるし。
汐ちゃんを聖王会に入れたくない動機が、聖王に近づけさせたくないっていうのは何か違う気もするけど)
今回起きた、"尚書院不祥事"の原因が、男ばっかの三角関係っていうのも、なんだかバカみたいで泣けそうだ。
もう早く帰って寝たい。
汐ちゃんの様子も気になるし、ユズもあれからどうしているのか気になるし。
ユズ、ものすごくショックだったみたいだし、落ちこんでいないと良いけど……。
(うわ! そういえば明日、数学テストもあったんだった!)
そんなことを考えていたら、隣の席から「ハイ」と手が上がった。
修司だ。
今度は何!
「せっかくこの場に"姫"席復活の話が出たことですしー。現時点の決を取ってみるのも、良いと思います。面白いし」
"面白いし"!?
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