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聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
4
 唐突の質問に、ぐっと喉がつかえたように息苦しくなった。

 ……ご両親は、と……そう聞いたのだと、頭の中で繰り返す。
 急に思考に靄がかかったように、考えることがつらくなってきた。

「お父さま……いや、えと、両親は……亡くなりました……」

 一瞬、「え?」と目を見開いた鷹宮さんが、東原さんを振り返った。
 東原さんも驚いたような顔をして僕を見返したけど、すぐに興味を失ったように視線を外していく。

 笑みを取り戻した鷹宮さんは、すぐにもとの語調に戻った。

「そう。突っ込んだことを聞くけど、ご病気か何かで?」

「いえ、あの、びょう…… ……そうです、病気で」

「ご両親続けて? それじゃあ、この保護者欄に記名がある、花井芳明(よしあき)という人は親戚かい?」

「芳明さん……は……お、叔父……です」

 いったい何だろう。
 この質問たちは何のために聞かれているんだろう。
 僕は、何のためにコクマへ呼ばれた?

 東原さんが、かつかつと靴音を立てて、上座席の後ろから近づいてきた。
 僕のすわっているすぐ隣の席に、どすんと座ってテーブルの頬杖をついて視線を向けてくる。

 王軍長である、この人に見つめられると体がすくんでしまう。
 膝の上で握りあわせた両手が、急速に冷えていくのを感じた。

「つまり両親が死んで、引き取られた孤児ってわけ? 叔父さんでもいて良かったね? よくこんな金のかかる学校に、甥っ子を入れてくれたもんだね?」

 立て続けに跳んでくる台詞に、僕は「はい」しか言えなかった。

 その通りだ。
 両親が亡くなったあと、叔父は一人ぼっちになった僕を探してくれて、引き取ってくれた。
 そして、僕の身を案じ、この学園へ。

 息をするのに意識が必要だと思うほど、緊張していた。

 東原さんはあの朝と同じように、僕の制服の手首を取った。
 乱暴に袖口を引き上げて、手のひらと甲を見つめる。
 そのままじっと僕の顔をにらみつけた。

「冷たい手。聖痕はどこへやったの?」

「せ、せいこん……?」

 何のこと?
"せいこん"って?
 聞いたことのない言葉に動揺した。
 頭の中の靄が、鬱蒼と濃くなっていく。

 東原さんはすうと目を細めて、声色を低く変えた。

「すっとぼけるな。手の痣だよ。聖痕だって、自分で言って回ってんだろうが?」

「し、知らな……」

 せいこん が何かも知らない。
 言いがかりだ。

 多分、きっと、誰かと間違えて……でも、手の痣は僕にもある。

 手の痣……?
 どうしてこの人たちが、僕の手の痣のことを知っているの?

「王軍長。花井くんが吃驚している。そんな言いようはないだろう?」

 ねぇ? と同意を求めるかのように微笑みかける鷹宮さんは、ソファから動く様子はない。

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