聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
3
「…………」
雅臣がくつくつと忍び笑いを洩らしている。
高美は無表情で、紅茶を口にした。
(『"空席"が埋まるかもしれない』だって?)
馬鹿も休み休み言え。
雅臣が何を企んで、聖痕の話をしたかは明らかだ。
今は家令として聖王に仕える雅臣は、明石の失脚を狙っているに他ならない。
空席に花井汐を座らせて、どう利用しようと言うのか。
高美は高美で、一年生のくせして感情の波をよくコントロールしている。
花井汐については、情報を持っているだろうに口を開かない。
まさか、家令の買収済みじゃないだろうな?
(タヌキばっかりだ)
「俺は……梅路さまの、下僕ですよ?」
自らの唾液で水音を立てて、良樹は当然のことを言う。
コクマ寮の自室で、引き入れた良樹に身体を弄らせて、俺は快楽を貪っていた。
コクマ寮司酒長である大沢良樹(おおさわ よしき)は、呼び出せば必ず来る。
この頃は便が良いのもあって、人肌が恋しくなると良樹を呼びつけている。
「くだらない……んん……指じゃ、もう……は……」
「梅路さま。中に欲しいですか、俺が」
四つん這いになった俺の視界にはいない場所で、良樹は熱い息を吐き出しながら言う。
嬉しそうに、俺の腰を抱えて。
――梅。俺ので擦って欲しいって言いな? うまくねだれたら、好きなだけ中を掻き回してあげる……
(明石)
見て。
腰を揺らしてねだるさまを。
貴方だけが欲しいと懇願する声を。
「早くぅ……擦って……」
良樹が腰を入れてくる。
回数をこなすごとに、俺の身体を学習するのか、快いポイントをつかんで攻めたててくる。
悦くてたまらない。
涙をこぼして喘ぎながら、脳内では狂ったように焼きつく妄想を映像化していた。
「は……ぁぁ…っ、あかしっ、明石、……悦い……っ……」
下腹いっぱいに感じる良樹の雄を、俺をわしづかみにして肉をぶつけるたくましい腰を、明石のそれに移し替える。
――梅。いい? いい子にしてたら、壊れるまで突いてあげるよ。
「もっ……と、明石、もっ……」
喉が渇いて、血が滲むほど明石の名前をくり返す。
求めているのは明石だけ。
王軍長は、聖王のためだけに存在している。
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