聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
2
譲が「普通の生徒会とはちょっと毛色が違う」って言ってたけど、今のところ、大した活動やっているように思えないけどなぁ。
唐突に譲が立ち上がった。
茶碗を片手に見おろしてくる。
「汐も飯、おかわりする? 入れてこようか?」
「う、ううん。要らない。ありがとう」
ん、とだけ返して、譲は巨大炊飯器に向かって歩いて行った。
昨日、晩ご飯食べて寝て起きただけなのに、なんであんなに食べられるんだろう。
食事の後は、通学の時間になる。
部活の朝練習がある生徒は、食堂棟からそのまま走っていく。
僕はまだ部活にまで余裕がないから、一旦ケセドに戻ってからの通学にしている。
教会の前の道を行って、初日に見た迷路の庭を過ぎて、噴水を通ると校舎が見える。
遠くから見たときに見た宮殿のような校舎は、目の前まで行くとさらに迫力を増す。
迫りくるようだ。
「あれ、何?」
下足室へいくまでの道に人だかりができている。
譲はふうと息を吐いて、「掲示板」とぶっきらぼうに答えた。
("掲示板"?)
「高美たち尚書院が作った文書が、掲示されている」
「見てきていい?」
問うと、「ああ」と短く返ってきた。
嫌なものを見た、という顔で、譲自身は見に行こうとはしない。
待っているから行ってこい、ということのようだ。
大勢が集まっている中に、少しずつ隙間を詰めて入りこむ。
確かに掲示板はあった。
雨の日でも大丈夫なようにということか、掲示板というよりガラスケースが立っているみたいだ。
中に、見ただけで手触りまでもがわかりそうな上等の紙が納めてあって、紙本体には大きく金獅子の紋章が印刷されている。
僕の知らない生徒の名前が続いていて、罰則は自室謹慎。
違反内容は、消灯時間を守らなかったこと。
ぴかぴかに磨かれたガラスケースの前で、僕は呆然と立ち尽くした。
(消灯時間を守らなかった時の罰則は、寮トイレ掃除って聞いてたけど!!)
確か、あれは天野司酒長から出された罰則だった。
その前になんか二人組が覗きに来ていたけど、あれは……。
(二人組に見咎められていた場合、もしかしたらここに譲と僕の名前の紙も、貼りだされていたかもしれなかった、てことなの!?)
尚書の一番下に、綺麗にデザインされた文字で"聖王会"とある。
くだんの生徒を謹慎処分にしたのは、学校や教会じゃなくて、聖王会だったんだ。
(嘘!? 厳しすぎるよ!! 確かに……普通の生徒会と、ちょっと違うかも……)
普通の生徒会に、一般生徒に謹慎処分を下す権限なんてない。
僕は消灯時間破りぐらいだったら、トイレ掃除が妥当だと思う天野司酒長派なんだけど。
そんな軽口、叩ける状況じゃなかった。
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