聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
7
汐と同じ、同い年で同じ男であるはずだが、俺に寮生活におけるでかウサギの重要性は理解できないけど。
暗がりで、ウサギをキュッと抱きかかえている汐がうっすらと見える。
うつむいて、ウサギの襟元に鼻先をうずめている姿は、到底自分と同じ年には思えない儚さが漂っている。
それに――
――触らないで……許して……
(……。なんか、俺にはよくわかんねートラウマみたいのがありそうだしなぁ……)
ここでからかったり、笑ったりすべきじゃないんだろうけど。
「なぁ、そのウサギ。名前なんての?」
「なっ……! 名前なんか、ないよ!」
吹きだしかけた。
あるんだ、名前。
おやすみっ、と勢いづいた汐の寝返りの音にごまかして、俺は上掛けを引っぱりあげた中、忍び笑いを洩らした。
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