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聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
2
 聖王は頷いてから「よろしく頼む」と返して、部屋の戸を閉めた。
 廊下を去っていく足音にホッと胸をなでおろす。

 なぜだかあの顔は、俺を緊張させるのだ。









 日曜日の昼間。
 昼食を済ませ食堂棟を出た俺は、部屋には戻らず直接コクマの会議室に向かった。

 生徒たちの週末の過ごし方はそれぞれで。
 短い日数で自宅へ帰る者もあるが、ほとんどの生徒は学園で過ごす。
 部活に時間を費やしたり、談話室で歓談したり、自習室に籠もったりと学園の中でもそれぞれだ。

 それらを視界の隅に押しやって会議室のドアを開くと、珍しくすでに揃っていた。
 聖王 森村明石以外の役員メンバー。

 侍従長 川上修司。
 尚書長 広瀬高美。
 そして新王軍長 堀切茂孝。

 長いテーブルには各席の前に、コーヒーが並んでいる。
 配っているのは堀切王軍長だ。
 会議には初参加の王軍長が、かいがいしく動いていた。

(元々、尚書長と侍従長は細かいことに気づくタイプじゃないしな)

 それでも、仕事の細部に支障をきたしたことはない。
 彼らから一通りの挨拶を受けた後、席について書類を広げながら全員へ順に、視線を回した。

「議題は、知ってのとおり、空席になった各寮司酒長の人選だ。
 前もって推薦してもらった一覧が、手元にあるはずだ。それ以外に推薦があれば、今ここで追記したいと思うが」

「……聖王陛下が一存で決めてくれりゃいーのに……」

 川上侍従長が推薦一覧をひらひらさせながら、悪態をつく。

 言うことには同意だ。
 議題を任されても、決定事項の是非を聖王自身が下す。
 聖王抜きの会議に、意味を見いだせなくなっても当然といえば当然のことだ。

(だが、それはそれ。すべきことはすべきことだ)

「現在、空席になっているのはネザク、コクマ司酒長席だ。まず、ネザク司酒長に推挙ある者は?」

「――鷹宮さま」

 椅子を後ろへずらし、その前に王軍長が起立した。

 その向かいの席で、尚書長 広瀬高美が部屋から持ってきていたらしい飴玉を口の中でもごもごさせながら、じっと俺を見た。

「司酒長人選で、ネザク司酒長にだけは伝統がありますよね?」

 言いながら尚書長が、立ったままの王軍長を見上げている。

「ネザク司酒長には、王軍から出てもらうのが近年の慣例ですよ。ね、堀切王軍長♪」

「はい。ネザク司酒長は王軍副長も兼任するのが習わしです。王軍から、ネザク司酒長には、滝川輝幸を推します」

「滝川か……」

 ネザク司酒長人選慣例を知らないわけじゃないが。

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あきゅろす。
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