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きらきら(本編/一旦完結)
8
「『どうして?』って顔だな、仁科成海。
 いいか? 物事には、均衡ってものがあるんだよ」

 河本先輩は指先で俺のあごを引き上げて、視線を合わせた。
 よく見ることもなかった河本先輩だけど、井上をぶっ飛ばした腕力からは繋がりにくい優男タイプだ。
 顔だけは。

「上のものに下のものが従い、また下から入ってきたものが上になったものに従う。
 これがルールだ」

「…どこの世界も同じですね」

 一応、相槌を打つ。
 河本先輩はうなずいてから、話を続けた。

「ルールを破ったものには、ペナルティーが課せられる。それが伝統を守るってことだ」

(“伝統”て)

 そんなご大層なものか!? とつっこみたくなるのを、飲みこむ。

 要するに、豚まん藤田先輩が統率していたヤンキー軍団に、突然タクが入ってきて。

 何がきっかけかは知らないけど、野田が藤田先輩から寝返ったことで、寺島・井上その傘下(いるのか?)もろとも離れてしまった、ということが=ルール違反 になるらしい。
 離散の原因となったタクが、藤田先輩に叩かれる、というのがペナルティーか。

 話はだいたいわかったけど。

(俺が拉致されてるのって、関係なくね!?)

 藤田先輩がどんだけのものか知らねーけど。
 あのデカヤン野田をしめたタクが、簡単にボコられるわけないだろうし。

(あ。だから、か。……。関係、ある)

 休み時間になるたび、俺の周りをうろちょろしていた、野田とか寺島とか井上とか。

「やっとわかったか」

 河本先輩は俺の顎に手を添えたまま、唇のすぐ近くに軽いキスをした。
 顔をそむけても、追いかけてくる。

「ダッサ! タク1人にそこまで? 先輩方、やり方がちょっと汚ねーんじゃないですか?」

「見た目通り、ちょっとバカだな、仁科成海は。嵯峨はおまえのそういうところに庇護欲を感じるのかな」

 河本は俺の制服のタイを解いた。
 指先ではじくようにして、シャツのボタンが外されていく。

――男の穴も、具合いーからな。

 寺島のセリフが、妙にはっきり蘇って、気味悪さに全身に鳥肌が立った。
 自由になる足を、河本との間になんとか差し入れる。

「誰がバカだ! 触んな、変態っ!」

「ルール違反のペナルティーっていうのは、痛みを感じなければ意味がない」

 両膝を割って体を入れて近づき、開いた襟元に唇をうずめた。

「ん…っ…や、触んなっ…」

 肌をなぞる舌が、熱くて。

「さ、触、んなっ…」

「拳による痛みとか、抵抗できない痛み。大事なものを好きにされる痛みとか…。
 ま、ペナルティーにも、色々あるだろう?」

 ちゅっ、と鋭い音を立てて、首に吸いつかれる。

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