きらきら(本編/一旦完結) 5 教室に戻って、飛び上がりそうになった。 西田と高橋に混じって、タクが楽しそうに歓談していたから。 高橋の笑顔から推察するに、弁当箱の中身もなんとかなったらしい。 タクは俺を見つけて、廊下まで出てきた。 「ナル。どこ行ってたの? 教室のぞいたらいなかったから、待ってたよ」 きらきらな笑顔に、ちょっとぐらりとなりかける。 非常階段の後の笑顔は、眩しすぎる。 「どっ、どこだっていーだろ」 そもそも、タクだって、いなかった。 そりゃ、約束してたわけじゃなかったけど。 タクの手が俺の額に触れて、肩がびくりと揺れた。 勝手に顔が熱くなる。 「何だよ! 触んなよ!」 「顔赤いし、熱っぽい。午後は帰るか、保健室に行ったほうがいい。 先生に言いにいく? ついて行こうか?」 俺のお父さんか、おまえは。 「非常階段にいたから、ちょっと熱くなってるだけだよ。んなこと、いちいち気にすんな」 タクの表情がふっと曇った。 「非常階段? 何しに?」 「鉄板焼きの気持ちが知りたかっただけだから! もう、何だっていーだろ! 5限始まるから、自分のクラスに戻れよ」 鉄板焼き!? と返すタクの背中を押して、D組に返却しておいた。 教室に入って、西田と高橋の近くに座る。 2人の邪魔をしたいわけじゃないけど、席が西田の後ろなんである。 (出席番号順。安易)。 時計を確認してから、高橋が髪を整えながら俺を振りかえって、声を潜めた。 「仁科くん、A組の井上(いのうえ)が訪ねて来たわよ」 「イノウエ?」 誰だっけ、ときょとんとしていると、西田が半身を寄せて「デカヤンと一緒にな」とつけ加えた。 高橋が隣で、うんうん頷く。 「仁科くん、なんかやらかしたの?」 高橋が長いまつげを瞬かせて言う。 たわけ、俺はいつも何もしてねえっつの。 「そういやデカヤンて、常にスリーマンセルだもんな」 ゲーム話か、と西田がつっこむ。 デカヤンとうちのクラスの寺島と、井上。 いつも三人でつるんでいる。 それに入っているわけでもないのに、デカヤンはなんでタクを信用しているのか、わかんねぇけど。 「野田、タクを探してたんじゃねぇの?」 「ううん、嵯峨くんならここにいたし。 ああ、そういえば、嵯峨くんとちょっと話して、また出てったわ」 「へー…」 デカヤンどもが何考えて動いているのかはわかんねぇけど。 (タクが訳わかんねぇことに巻き込まれなきゃいいんだけど…) ……。 いや。 [*前へ][次へ#] [戻る] |