きらきら(本編/一旦完結)
2
「あら、そう。だったら早く言ってちょうだい。余計なことに神経使うと、疲れるじゃないの」
前言却下!!
全然まともじゃねーし!!
「いい? 若いから忠告しといてあげる。
あなたにも口があるんだから、言うべきことは言わないと、世の中生きて行けないわよ」
「言ってます! それこそ、余計なお世話です。
あなたこそ、後から乗りこんで先に行き先告げるとか、おかしいでしょう! 口があんなら、俺に一言謝ったらどうなんですか!!」
彼女はマスカラばしばしのまつげを瞬かせて、じっと俺を見た。
しまった。
勢いに任せて、言い過ぎた…かもしれない。
「それは、悪かったわね。ごめんなさい?」
語尾上げ謝罪って、謝ってもらってんのに、なんかムカつく!!
タクシーがすでに止まっていたらしい。
彼女と俺の暴言ラリーに恐れを貼りつかせた顔で、おずおずと「着きましたけどぉ…」と挟んだ。
「支払いをさせるわ、ちょっと止まってなさい」
彼女が降りた後に、俺も続いて降りた。
そこに、彼女が何者か証明する人物がいた。
「あれっ、ナルくん。
真理奈(まりな)さんと一緒だったの!?」
「……」
秀也さんだった。
彼女、もとい真理奈さんが「あら、秀也の知り合い?」と、俺に視線をくれた。
秀也さんが俺ににこっと笑みを向けて、タクシーの支払いに通りすぎて行った。
真理奈さんと直接、ばしっと目が合う。
「俺は、仁科成海。タク…拓人と暮らしています」
そう、と真理奈さんは無表情に瞬いた。
「じゃあ、あなたが今の拓人のパートナーってことね。あたしを知らないってことは、音楽畑の子じゃないわね」
「はい」
「なんか…フツーね? 成海くん?」
クスッと小馬鹿にした赤い唇の端が引き上げる。
そのセリフは言われ慣れている。
つか、俺に言わせれば、お前らが枠からはみ出すぎなんだよ。
そして、それを許してきた環境がある。
例えば、秀也さんみたいに。
「うるせえよ、ババア」
真理奈さんの表情が止まった。
「万人に名が知れてると、自分で思うほど現実は追いついていないんだよ。そういうの、自意識過剰っての」
「へぇ…口があるのは確かみたいね?」
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