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きらきら(本編/一旦完結)
3
 否、と脳が即答する。
 まぁ…考えていないんだろうなぁ。
 だから気軽に言ってくるんだろうし。


(断る俺の身になれよな)


 小さなため息をついた。





 時間を気にしながらも、ナイフとフォークを忙しく動かして、ハンバーグを口に運ぶ。
 早く食いきってしまわないと、バイトの時間に響いてしまう。


「で? 話があんなら早くしてくれよ、要」


 なぜか隠れるように、学校の裏門に車を止めた要がメールを寄越してきて。



〔From:要
 Sub:
 嵯峨くんに見つからないように、裏門に出てこれない?〕



 俺の行動に目を光らせているタクの視界から逃れるのは、至難の業なんだけど。
 タクがクラスの子と話しているのを見かけて、そのままダッシュで出てきた。
 見つかっていないと思う。
 多分。

 そのままファミレスに連れてこられたのが、現在地なんだけど。
 中途半端な時間帯なせいか、店内に人は少ない。
 ウェイトレスも暇そうだ。

 テーブルの向かい側にすわって、コーヒーを手にしている要はあまり機嫌が良さそうではない。


「成海、おまえしばらく嵯峨くんと暮らせよ」


 口の中のハンバーグを、ごくんと飲み込む。


「はぁ? 何言って…。あ! まさか要、タクに何か言われたんじゃねえの!?」


 何が、とイライラした顔でコーヒーを飲む。


(なんで俺、呼び出されてイライラされてんの…)


 意味がワカランのですけど!
 要は不機嫌顔のまま、コーヒーを離して説明し始めた。


「蒼詩会(そうしのかい)、要するにピアノコンクールなんだけど。
 それに、清歌会から嵯峨くんを推薦したいと思っているんだ」


「そうじの会?」


 蒼詩、と眉間のしわを深める。


「蒼詩会で上位に入れば、あちこちで腕が認められて、演奏できるようになる。無論、勉強が必要ならバックアップも可能だ」


「…。すげえじゃん。タクがしたいって言うんなら、すれば良いんじゃねえの?」


 ライスを口に詰め込みながら、内心「またか」と思わないでもなかった。
 ピアノの話をタクが受ければ、タクはまた東山にある清歌会のレッスン場に通いづめになるんだろう。


(べっつに、それが寂しいとか、くだらねーこと思ってないし!)

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