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きらきら(本編/一旦完結)
10
「清歌会の中は、携帯持ち込めなくてさ」


 …何の話…


「城戸みたいに長年会員やってれば、持ち込み自由みたいだけど。俺なんかは会員でもない、外部の人間だから、情報漏洩防止のために、受付に預けなくちゃいけないんだ。
 だから、ナルの携帯と家に電話した時、受付の公衆電話からかけた」


 そういえば、ババアが公衆電話からだったからかけなおしは無理だと言っていたような気がする。


「携帯と家、何度かけてもナルが出ないのなんて、俺には我慢できなくて。
 受付に走って、携帯を返してもらって。その場でGPSを使って、ナルを探した。どこにいたと思う?」


「井上の、家…。携帯、落として…井上が拾ってくれてて…」


 ただ、その時、携帯のある場所=俺のいる場所じゃなかった。


「おかしいと思ったけど、上手く音が出せなくてヒステリー気味だった城戸も置いて出られなくて。
 ナルを信じるしかなかったよ」


 それなのに、と続く。


「昨日の夜、ナルの部屋に入って来なかったから、やっぱり変だと思って。寝ているナルの体を…見た」


 きれいなビーだま目が曇る。

 俺のせいで?
 どうしてか、小さな自嘲がもれた。


「…がっかりした? 信じていたのに…『裏切られて』?…」


 ビーだま目が、揺らいだ。
 俺が開き直っているようにでも、見えただろうか。

 きゅっと目を閉じると、たまっていた涙液がこめかみに落ちて行った。


「…連絡つかない俺が、気にはなったけど…でも、城戸葵を置いて行けなかったんだろ?
 それって結局…」


 息を吐く。
 強制的に熱を持たされた体が、どうしようもなくつらい。
 重い腰と、その奥の疼き。
 前は張りつめて、白い熱を垂らして腹にこぼしている。


「結局その時、タクは…俺より、城戸葵を選んだってことじゃん…」


 また涙があふれてくる。

 こんなこと、言うつもりじゃない。
 タクの邪魔になるからというよりも、自分が情けなくってしまうのが怖かったから。
 物わかりが良いふりをしているほうが、まだつらくなかったから。


「いつもそうだろ…? タクは…俺にどこに行くとも言わないで、城戸葵の所に行くだろ。
 …好きだとか何とか勝手なこと言って、いつだって放置じゃん」


 嫌いだ、タク。
 そんな言葉を続けて。
 焼けつく嫉妬と、孤独感と、裸に涙でぐしゃぐしゃな最低だ。

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