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きらきら(本編/一旦完結)
8
 ベッドの端に腰を下ろして、俺の携帯を操作している。
 スワロパンダが、きらきら光りながら揺れている。

 思う場所に接続できたのか、画面をずいと俺に向けてきた。
 サーバーに残ったタクから俺へのメールがずらりと並んでいる。
 どれもこれも、見たことがない。


「こ、れ…受信にはなかっ…。何これ…なんで…」


 つい、と携帯を手元に戻して、パチンと閉じた。
 ぶら下がっているスワロパンダがびっくりしたみたいに揺れた。


「消されたんだろうね。…スカルボに…?」


 不思議な話だね、とタクは続けた。


(井上のヤツっ…)


 手元にあった間に、タクからのメールも着信履歴も、とっとと消してしまいやがったんだ。

 いっぱいいっぱいで煮詰まっていた俺は、それをタクから何の反応もなかったと、あっさりネガティブ解釈をして。
 ババアから、家電話にかかってきた話もまともに聞けてなくて。


(けど、最終的にタクを信用しなかったのは自分だ)


 タクを信用せず、目の前にいるというだけで、井上を信用した。
 井上に体を許したのも、自分だ。
 言い訳はできない。


「『好きだ』って言われた?」


 何も返さない。
 返さないことを肯定と受け取ったのか、タクは半身を近づけてきた。
 指先が、何の躊躇もなく、腰の奥に触れた。


「…痛っ…」


「好きだって言われたから、ついここも見せちゃった? 頭悪いね、ナルは」


 昨日の今日で、そこはまだ腫れて熱を持っている。
 解してもいない後孔に、長い指がずぷりと入りこんだ。


 滑るわけがなくて、傷口に触れると腰が勝手に逃げようとする。
 上下の鎖がちゃらちゃらと鳴っているのが、まるで笑っているみたいに聞こえた。


「痛いっ…やめ… あっ…?」


 指が出て行ったのに、何かが残っている。


「あんまり動かないほうが良いよ? まぁ、動いても動かなくても、最終的には同じだけど」


「何をっ…入れ…」


 タクは初めて顔に近づいて、こめかみに口づけた。


「良いもの。きっとナルは涙を流して悦ぶと思うよ?」


「…!? 取ってよ…取っ…タク、どこ行くの!?」


 訳のわからない何かを腹の中に置いたまま、タクはピアノに戻っていった。

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