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きらきら(本編/一旦完結)
3
 上、というのは屋上のことだ。
 タクとも特に約束しているわけでもないし、と思いながら、パンの袋を手にしていると、タクと同じクラスの高橋が、


「嵯峨くん、午前で帰ったわよ」


 と言ってきた。


(それ、聞いてねえし)

 どうせ、城戸葵関係で東山なんだろうけどさ。
 城戸葵に嫉妬心燃やしても、仕方ないし。
 ちら、と寺島を見る。


(こいつの『折り入って』って、どうせコンパのことなんだろうけどさ)


 寺島について屋上に上がると、コンクリートの上で、もう昼飯を食い終わったらしい野田が半分寝かけていて。
 井上が、食堂のコーヒーカップを手に、タバコをくわえていた。
 寝かけていていた野田のほうが、寺島と俺に気づいて、手をひらひらさせた。


「嵯峨さん、またピアノなんだってな」


「あー、うん。多分」


 寺島が井上の隣に腰を下ろし、俺も寺島の横にすわって、パンの袋を開いた。
 チキンサンドと、おやつ代わりのメロンパン。
 それにコーヒー牛乳だ。


「…?」


 かし! かし! と空回りの音が聞こえると思ったら、井上の古いライターだった。
 風で火が消えるらしい。
 ずいと半身を寄せて、風避けになってやった。
 火がつく。


「ついた?」

「うわっ!? にしっ!?」


 今初めて気がついたみたいな顔をして、思いっきり煙を吸い込んだ井上が、咳き込みだした。


「だ、大丈夫か?」


 顔を真っ赤にして咳き込む井上を見て、野田がペットボトルを蹴ってよこし、寺島はゲラゲラ笑っている。
 背中をさすってやると、井上は荒い息のまま、「もういい」と返してきた。

 席を寺島の横に戻すと、赤い顔のまま、井上は白煙を吐き出していた。


(あんな咳き込んで苦しんだくせに、タバコは止めないんだ)


 不思議だ。
 匂いを嗅いでいる感じじゃ、全然旨そうじゃないけど。

 寺島が焼きそばパンにかじりつきながら、携帯を操作して俺に見せた。


「北高なんだけどどう? 陸上とか」


「だーかーら! コンパには行かねーつってんだろ、寺島はっ!!」


 なんでだよ! と唇をとがらせる寺島に、野田が「俺が行く」と言って断られている。

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あきゅろす。
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