龍のシカバネ、それに月
6
色名を賜っていたとはいえ、18才だった碧生さまが一人、匣姫を救い出すことなど不可能だった。
それでも、なお。
「今でも、先の匣姫さまの声が聞こえるんだろう」
「そんな……酷い」
酷い。
誰が? 何が?
「優月……」
──好き……だ、優月……。
幻が聞こえるのは、僕も同じだ。
あれは幻、遠い遠い言葉。
匂いに惑わされていない青鷹さんなら、決して言うはずのない……。
青鷹さん僕を抱きしめて、深い口づけをくれた。
月が、ゆっくりと黒い雲からその光をこぼしはじめていた。
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