龍のシカバネ、それに月
8
「まだ東のものって決まったわけじゃねえだろ」
「大丈夫だと言ってる。痛みも引いてきた…… ……?……」
意識を閉じようとしている僕を抱えて立ち上がった青鷹さんが、背中の傷に触れた。
絶句した青鷹さんを不審に思ったらしい灰爾さんが、同じように青鷹さんの背中に触れる。
「傷が、ない!? どういう……」
目を見張った灰爾さんが、僕を見る。
まだ意識はあったけど、灰爾さんに何か言う力がなくて。
薄く開いていたまぶたをそっと降ろした。
「これが匣姫の能力ってやつなのかよ……目の当たりにすると、ぞくっとくるな……」
「っ! 優月に触るな」
「ちょっと撫でてみただけだろーが」
灰爾さんの声が「子供みてえななりしてんのによ」と余計なことを続けているのを、僕は青鷹さんの腕の中で、夢現にぼんやりと聞いて。
やがて、意識が途切れた。
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