龍のシカバネ、それに月
2
もっと言えば、前回ホテルで挿れてもらった時だって、あんな風……じゃなくて、普通に入れれば良かったんじゃないかって、思っ……。
ぬるぬるの手をがし、と掴まれて、下半身に導かれる。
四の五の言うなってことなんだろうけど、それじゃあんまりだ。
抵抗も空しく、自分の指先が後孔に触れた。
びくっと腰が引ける。
「青鷹さっ……」
「匣の匂いは、龍との交合によってのみ薄まる」
「…………? こうご……」
固い物言いと強引に導く手に抵抗して問い返す。
「体内に龍の精を受けるということだ」
さらっと言われた言葉の意味が脳に到達した途端、顔が恐ろしく紅潮した。
「たっ、体内に精って、それって、……そんなの無理でしょう!?」
何を言っているのかわからないというような顔の青鷹さんに「僕は、お、男だし」とつけ加えると、ああ、と生返事をくれた。
わかってくれてるのか、不安になる返事だ。
「薬は龍の精に似た成分で作られている。受け入れる匣の体も、交合時に近い状態にして挿れる必要がある」
事務的に言いながら、僕の指を捕まえて、つぷ、と中へ進める。
いきなり入ってこようとする異物を外へ押しだそうとして、無意識にぎゅっと締まった。
「っ…ん……」
「受け入れろ」
青鷹さんに抱きついた手の指先がに力が入る。
息がこぼれて、のぼせたみたいな頬に熱がのぼった。
目を閉じて、入ってくる自分の指の気持ち悪さから意識を逃していると、突然前に触れられて、びくっと肩が揺れた。
後ろから抱きつかれる形で前へ手が延びている。
青鷹さんじゃない。
目を開けると青鷹さんの不機嫌な顔が、僕の背後を睨み付けていて。
「蒼河……」
「後ろだけに集中しろって言っても無理なんじゃないの? そう睨むなよ、手伝いに来てやったのに」
な、優月♪ と耳元に軽く唇を触れる。
「……や…ですっ、離しっ……」
青鷹さんの前で裸でいて、さらに自分でありえない場所に触れる練習。
それだけでも顔から火が出るほど恥ずかしいのに、この上蒼河さんにまで触れられるなんて、無理だ。
「可哀想に。全然芯ができる気配がないじゃない。こういうのは気持ち良くないと、次もやりたいとは思わないものだよね」
指が、無反応の性器を柔らかく揉みながら、もう一方の手が後ろに触れてきた。
「そ、蒼河さ……」
「これから何人もの男に抱かれる可能性だってあるんだから、これを気持ち良いと思えなかったら、地獄だよ?」
背後から囁かれるように言われた言葉に、一瞬、意識が止まった。
「蒼河!!」
青鷹さんが、僕に触れていた蒼河さんの腕を引いて、視線を合わせた。
「出ていけ。匣姫指南におまえの出る幕はない」
「そうかな? 優月だって知りたいよな? 匣宮に行く時、そう言ったよな?」
ぺたんと床に腰を落ちつけて、僕は自分が言ったことを思い出して、蒼河さんに頷いた。
でも、どうしよう。
さっき聞いた蒼河さんの話も頭に反響していて。
勝手に手が震える。
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