龍のシカバネ、それに月
6
「……え?」
顔を上げると、青鷹さんが固い表情で僕を見ていた。
「今夜から、指南を始める。どんな指南かわかれば、優月も気が変わるかもしれん」
それじゃあ、と言って踵を返して、さらさらと廊下を歩いていく。
夜闇の中に白い背中が消えていくのを、携帯を触りながら見送った。
廊下を曲がったのを見てから、携帯のつるつるした表面に触れた。
いつでも思う時に、青鷹さんに連絡を取れるようになった。
(すごく不安になる……)
知らない場所で、初めて聞く話ばかりだったから。
朝陽がいないから。
匣姫指南と言ったときの青鷹さんが、怖かったから。
理由はさまざまだ。
長い息を吐くと、胸に溜まりつつある何か重いものが少しだけ抜けていく気がした。
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