龍のシカバネ、それに月
5
「灰爾……匣宮のばば様が持ってくる写真の龍の娘と結婚しなよ。で、子供作ってさ。そしたら……わかる」
「結婚なぁ……ぴんとくる娘がいなくてさ。困っちゃうよねぇ」
ついと膝を立てて、自分で後ろを濡らして解しながら、俺の肩に抱きついてくる。
まだヤるつもりらしい。
唇を合わせて、今度は蕩けた舌をこっちから差し入れてやる。
「っん、今日は、俺が下になるから……っ。だから、結婚しなよ、灰爾……」
「紅騎、おまえさ…… ……」
謎かけのような言葉を口にしながら、壮絶に綺麗な顔を乱して、熱を吐く。
炎を吐く紅龍。
眩しいほどに赤く灯る……。
──紅騎、おまえ。本当は何もかも知られたいんじゃないか?
いつも抱いている言葉は、今日も口に上らせることができないようだ。
「……何でもなーい……」
「はは、何それ」
おまえの本当の気持ちを、俺が知っているんだと知ったら、おまえ、消えてしまうんじゃないか……?
すべてを知られたら、おまえはこの体さえ、簡単に捨てていきそうで。
紅騎は仰向けになって、脚を開いて見せた。
赤く染まった指先が、どちらのものとも言えない白濁に濡れた下腹を撫でさする。
「早く……灰爾」
「ん……」
──結婚しなよ。
それが、おまえのパズルの、次のピースの一つなのか?
それが嵌ったらどうなる?
今までどんなピースを合わせてきた?
その一部がわかると、おまえは言ったのか?
だったら、そうだな。
「良いさ。結婚する。そうだな……重ねてある写真の上から三番目の娘にしよっか……」
くすくすくす。
紅騎が笑う。
すべてを持っていてその実、何も手にしていない、意味がないと思っている空っぽの紅騎。
美しくて甘くて、可哀想な空っぽの紅騎。
その器はどうしてやれば満たされる……?
「……は、……ああ……良いよ……灰…」
ゆっくりと腰を入れると、甘い声で鳴く。
先に嵌めたピースを隠すために、嬌声を上げて、俺を中に迎えいれる。
なぁ、紅騎。
次はどんなピースの話を聞こうか……。
了
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