龍のシカバネ、それに月
7
「……あれを、僕が……やるんですかっ……!? 無理です、絶対無理!」
「大丈夫じゃ。わしと朋哉匣姫でなんとか指導してしんぜよう。朋哉匣姫なんぞ、何度稽古をサボったことか。それでもあの程度には舞えるのじゃから」
それはフォローになっているんだろうか。
おばあさんはまた「大丈夫じゃ、なんとかなろう」と言って、踵を返して行った。
(灰爾さんのお見合いの心配をしてる場合じゃなくなってしまった)
お見合い。
もし本当のことだとしても、あの灰爾さんがあっさり受けとるのかどうか。
(いや、あの人もどこまでが本気で、どこからが冗談かわからない人だからなぁ)
そんなことを考えていると、手が、青鷹さんの大きな手に包まれた。
見上げると、青鷹さんが微笑を浮かべていた。
「帰ろうか」
「……はい」
今は、いい。
これで良い。
先に何があるかなんて、誰にもわからない。
今は、今を生きよう。
この人と一緒に。
二人で、ずっと。
[*前へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!