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龍のシカバネ、それに月
6

 そうして、託占によって月哉は好きだった雪乃さまのもとに配置された。

 短絡的で自分勝手な、幼い愛情。
 四龍のために在るはずの匣姫が、四龍を守ることはなかった。
 それなのに、胸が熱かった。
 初めて月哉の、父さんが僕を思う本当の気持ちに触れられたような気がして。
 泣きそうな気持ちになる。

「それでもね、月哉は自分が愛してたものを守ったんだよ。必死でね。それが優月、君だよ。だから君は、報いなくちゃならない」

「報いる……?」

 そう、と朋哉さんは頷く。

「匣姫が守るべき四龍を守らずに、君を守った。四龍を犠牲に匣姫の愛を受けて生き延びた君は、四龍のために生きなくちゃ……なんてね」

 最後の一言に、朋哉さんは自分で笑いをもらした。

「どっちにしたって、どんな大義があったって、匣姫は四龍のために生きるって決まってんだけどね。応龍ですら運命から逃れられないのに、匣姫ごときが道を外れて幸せに生きるなんて、ありえないだろう?」

 そう、かもしれない──。
 応龍ですらも、頭領ですらも、華月子おばあさんですらも、その生涯を龍に捧げて生きている。

 それでね、と朋哉さんは、鼻先をずいと僕に近づけ、眉根を寄せた。

「託占が近いってのはさっきちらっと聞いたけど……よくもまぁ、東の匂いをぷんぷんさせてっ……」

「!? に、匂うんですかっ!?」

 焦った。
 だって、龍でもない朋哉さんにわかるぐらいなら、ここにいる龍、みんなにわかるってことじゃないか。

「秘薬の匂いがね、うっすらと」

 どれ、と身を起こして、僕に近づいてくる。
 抵抗する僕の手をあっさり払って、朋哉さんは僕のズボンの中にするりと手を差し入れた。
 ひやりとした体温が、さっきまで青鷹さんが触れていた場所まで伸びていく。

「はぁん……もうここまで作っちゃったんだ。執念すら感じるね。すごいね、東の頭領は」

 さすが同胞を殺してでも手に入れたいとやってきただけのことはあるよね、と変な感心の仕方をしてから、朋哉さんはもう片手を自分の胸元に差し入れた。
 襟元をすぎて、肉の中へ手を入れて、血がにじむこともないそのさまを、僕は口を開けたまま目が離せずにいた。

「いっ、痛くないんですか、それっ……」

 やがて、その白い手が抜き出されて、広げた手のひらに現れたのは銀色の粒。
 そう、ちょうど、いつも青鷹さんが口移しでくれる、秘薬と同じ形だ。

「これは匣宮の秘薬。これで俺が、優月を『匣姫の体』にしてあげる。本当は配置先で『匣姫の体』にしてもらえば良いんだろうけど、東はそんな気さらさらなさそうだし。俺がするのが一番、平等でしょ?」

「ふ……ぅんっ!?」

 言うが早いか、秘薬を口に入れられて、唇で蓋をされた。
 青鷹さんがくれる秘薬と同じで、味はない。
 下腹にぎゅっとしぼられるような痛みを感じた。

「──っ!? っっ……」

「我慢して……」

 青鷹さんがくれる甘やかな快楽を重ねていく方法とは違って、一気に無理やり体を改造されていくことの恐ろしさに、震えが走った。
 しがみついた朋哉さんの肩は、僕よりもずっと細いのに。

「や、痛っ……」


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あきゅろす。
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