龍のシカバネ、それに月
1
井葉屋敷の廊下を歩いている時だった。
いつものように、朋哉さんの様子を見にいくために。
「わっ!?……」
途中の部屋へ引き込まれたかと思うと、強い力で抱きしめられる。
腕を引っ張られた時から、相手が誰だかわかっているから、抵抗なんてしない。
(青鷹さん)
抱きしめてくれる背に、腕をまわして。
胸元に頬を寄せる。
体温と匂いを感じているだけで、幸福だ。
会談があったあの日から数日経った。
華月子おばあさんの言葉も身にしみたけれど、やっぱり一番大きいのは時の経過だと思う。
僕の心は嘘のように凪ぎ、おばあさんの言う“覚悟”めいたものが、体に生まれつつあった。
それは僕が、託占に任せるしかない運命を受け入れたということなんだろうか。
対して、青鷹さんは会談の日を境に性急になった。
一瞬の隙も見逃さずに小動物を捕らえる猛禽のように、僕を求めてくる。
「青鷹さ……ん、む……」
唇を貪られ、口腔に舌がうごめく。
息つく暇もくれないキスは、青鷹さんが我に返るまで続いてしまう。
配置が、東以外の場所にきまったら、僕はもう、青鷹さんの腕の中で熱い息をこぼせることもない。
そう考えると、せっかく凪いだ心が波立って。
青鷹さんの抱擁や口づけに抵抗する理由を見失う。
「優月……ゆづ……」
押し付けられた壁にもたれて、でも立っていられなくて。
青鷹さんの肩に腕を置いたまま、ずるずると畳の上に落ちてしまう。
障子ごしに、誰かが急ぎ足で歩いていく影まではっきり見える密室で、僕は青鷹さんと“こんなこと”をしている。
「青鷹さん……良いんですか、こんな……」
こんなこと、していて。
続けたい言葉は、青鷹さんに塞がれる。
片手で、簡単に僕の下衣の前を寛がせながら「こんな? 止められない。こんなになってるのに」と意地悪なことを言う。
「だっ……て、青鷹さんが、……」
触る、から。
後は涙声になってしまう。
握りこまれたそこをゆるゆると扱いて白濁に濡らされて。
与えられる快感に収縮する柔らかな肉の袋を撫でて、濡れた指はひたりと場所を留める。
同時に、合わせた口に、舌で小さな粒を押し込まれて、唾液を流し込まれる。
粒を飲み込んだ瞬間、青鷹さんの指から“力”か流れ込んできて。
「んっ、あああっ……っ」
だめだ、声なんか出したら。
いつ廊下を人が通るかわからないのに。
青鷹さんの手に白濁を溢して、あられもない声まで……。
それなのに青鷹さんは、そんなぐちゃぐちゃになった僕をまた抱きしめて「好きだ」と言葉をくれる。
(…………)
今日はこれで何度目だろう。
僕だけ達かされて、青鷹さんはつらくないんだろうか。
そんなことを考えて、恐る恐る青鷹さんに手を伸ばすのに、途中で捕まってしまう。
「俺はいい。配置に決まれば、嫌と言うほど抱いてやるつもりだから」
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