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龍のシカバネ、それに月
6

「っ……! しかし……」

 珠生さまは満面に笑みを浮かべた。

「新しい約束をしよう、青鷹」

「……は……」

 珠生さまは俺の隣に腰を下ろし、老婆に向き直った。

「東龍は匣宮再建に力を注ぐこと、四龍の結束に尽力することを約束致します。なおーー」

 言葉をとぎらせた珠生さまに、老婆は視線をくれた。
 珠生さまは山吹の几帳を振り返って、そして老婆に目を戻した。

「なお、匣姫さまのお心を第一に考える規律も提案させていただきます」

 場が、ざわめいた。
 匣姫の心を考慮するなどと、古今聞いたことがない。
 匣姫は匣姫として、龍の力を補うために在る。
 ただ、それだけが一生。

 さて、と老婆は手元に引き寄せた茶をすすり飲んだ。

「これまで長きにわたって憎しと思ってきた匣姫を、第一になぞ思えるものかね」

「優月を思う心は、誰にも引けは取りません」

 ほう、と口元を緩ませる老婆を見て気がついた。

 俺は会談という公共の場で、まるで誘導に流れていくかのように優月への気持ちを口に上らせてしまっていたのだった。


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あきゅろす。
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