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龍のシカバネ、それに月
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 あれほど固執していた思想をあっさりと捨てていくことが不思議に思えて……その表情のない顔は、どこか重荷を下ろしたかのようにも見えた。

 一方の影時のほうは、信じられないものでも見たかのように、黒い光を帯びた目を見開いて、おばあさんを見返している。

「何?」

「変わる気はないか。元の、おまえの父が目指したように。他の三龍と手を取り合って、支えていく北龍に戻るように」

 影時は笑みを浮かべて「まさか」と返した。

 おばあさんはじっと座したまま、「そうか」と小さな声で言った。
 それから、北の席に戻った影時を見止め、次に緑の几帳、東を見返った。

(この会談は、いったい何なんだろう?)

 匣宮として現れたおばあさんは、龍たちの現状を把握しようとしている。
 次代・現代の頭領が何を考え、どこを目指しているのかを。

 東に何があるわけでもない。
 僕は体の震えを自分の手で納めるように、さすった。
 席が几帳の裏で良かった。
 発言権がなくて、良かったと今さら思う。

 東の、青鷹さんに向かって、おばあさんははっきりした声で言い放った。

「『匣姫と、匣姫を配置する匣宮と四龍のすべてを壊す』。その願いは東龍も同様じゃったな、“龍殺しの青鷹”?」

 ──え?

 体をさする手を止めて、顔を上げる。
 山吹の几帳ごしに映る、青鷹さんの表情が見えなかった。













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