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龍のシカバネ、それに月
3

 口から指は離してくれたものの、まだ抱き込んで、僕の体を封じ込めている蒼河さんに抵抗しながら浩子さまに目をやると、やっぱり無表情のまま教えてくれた。

「東の後継、青鷹さまがお迎えに来られると聞いております。そろそろおいでになる頃じゃございませんか?」

「――え!?」

 と言った僕の声と、蒼河さんの「あ、青鷹」と言った声が同時だった。
 抱き込まれたまま振り返って、蒼河さんの視線を追うと、そこに仏頂面の青鷹さんが立っていた。








「力を分けてただけですよ!?」

 どう言っても言い訳がましく聞こえる僕の話に、青鷹さんは前を向いたまま、「わかってる」と返してくる。

(……気まずいっ!)

 前回の会談の時と同じに、隠し階段を降りていくのに。
 その手前の部屋に腕を掴まれて引き入れられた。
 襖を閉じながら、壁に背中を押しつけられて。

「…………」

 僕は、振りかえった青鷹さんのスーツの襟を掴んで。
 背伸びを、して。
 やっと届いた唇を、そっと重ねた。

 薄目を開くと、吃驚したように目を見開いた青鷹さんが見えて、重ねていた口元がちょっとだけ笑いに緩んでしまった。

「俺が、しようと思ったのに……」

「先にした者勝ちです……」

 唇を離して、同時に体を離して襖に手をかけた瞬間、もう一度背中から抱き込まれた。
 うなじに唇を寄せられて「ひゃっ」と声が洩れる。
 耳の縁に沿って指先が辿る。

「赤い。可愛い」

 自分からして、恥ずかしくなってきた? 
 そんな質問には、答えられない。

(……っ、図星だしっ…)

 だから、早く部屋を出ようとしたのに。腰に腕を回されたまま体を反転させられて、唇を合わせてくる。
 緩やかな会わせ目から、舌を差し入れてきて、中を撫でてくる。

「んっ…ふ…」

 くちゅ、と小さな音が鼓膜を入り込んできて、余計に赤く熱を持ってしまう。染まってしまった耳たぶを、青鷹さんの指がするすると触ってくるのが気になってたまらない。

「ふ…ぅん、も、やめ…」

 会談に行かなくちゃいけないのに。
 最後に、唇の端にキスを落として、力の抜けてしまった僕の体を支えてくれた。
 安心できるひなたの匂いのするスーツに頬をよせて、ほっと息をつく。

(僕が先にしたから? それとも蒼河さんに抱きしめられてるとこ見たから?)

 多分両方だ。
 こういうことに関してだけ、青鷹さんはやたら子供なのだ。

 スーツに触れた頬を薄く膨らましていて、また「ひゃっ…」と声が出た。

「じっとして……」

 指で背筋をゆっくりと辿られて、それだけでぞくぞくと快感が走っていく。

「っ…ううん…っ…」

 スーツの袖をギュッと握って声を堪えているのに、青鷹さんの指が容赦なく降りていく。
 ベルトを抜けて、双丘を降りて……最奥にたどり着いた。

「やっ…!」

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