龍のシカバネ、それに月
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今だって、どういう状態なんだ!?
「紅騎に優月ちゃん触られたのが、よっぽど嫌だったんじゃない? あの話した途端、飛び出して行ったじゃない、青鷹」
「え……あの話って?」
優雅に紅茶を口に運びながら、「優月ちゃんのアソコに紅騎が指挿れて、あんあん言わせた話」って言うから、こっちが噴いてしまった。
「えっ!? な、なんでっ……」
続ける言葉が見つからなくて、口をパクパクさせてたら、紅騎さんがしれっと「言わなくたって、服剥かれてる優月見たら、何があったかわかっただろ」と言ってのける。
それでも、わざわざ言わなくても良かったんじゃ!?
「ケツは無事に守ってやったんだから、良いだろ。俺は別に処女性とか気にしないけど、あいつ堅いからなぁ。
あー……青鷹には既成事実と勘違いさせたまま、優月を南にいただくってのもアリだったよなぁ……」
「ちょ、もう止めてもらって良いですか、その話っ……!」
恥ずかしくて、こめかみから頭への血管切れそうだ。
「せっかく、南に匣が来そうなチャンスを逃してでも、友情優先して守ってやったのにさー。本当ならやっちゃっても良かったんじゃん。青鷹にも、そこは親切に言ってあげたのにさー……」
「いっ、言わなくていーですっ!! 言っちゃうから青鷹さん、結婚なんて変なことを!
だいたい紅騎さん、いつから正気だったんですか!?」
バターナイフを片手にマフィンをかじり、紅騎さんはまた呆れたみたいな顔で僕を見返した。
「俺はいつでも、正気で大真面目だよ。薬ごときで良いようにされる、誰かさんとは違います。最初から最後まで、ちゃんと正気」
「……前から聞いてみたいと思ってたんですけど、紅騎さんて僕のこと、嫌いなんですか?」
この質問には灰爾さんも「興味あるなぁ」と笑って紅騎さんに視線を向けた。
紅騎さんは「くだらない」と息を吐いて、紅茶を一口喉に下した。
「託占で手に入るかどうかが決まる匣姫の機嫌を取ることに、何の意味がある? 好きとか嫌いとか、無意味だろ。
青鷹に祝言の話まで出してもらっといて、俺からも好意が欲しいのか?」
「そ、そうじゃありません。普通に接してくれたら――」
「俺はこれが普通なの。お生憎さま」
「〜〜〜〜っ!!……」
言葉が見つからなくて、紅茶を一気飲みする僕に、灰爾さんがまあまあと頭を撫でてくれた。
嫌いだとしても、もうちょっと何か言い方あると思う!
空になった僕のカップに、山瀬さんの指示か、メイドさんが暖かい紅茶を注いでくれた。
「灰爾さんは知ってたんですか? 紅騎さんが、騙されてるわけじゃなかったってこと」
「あー……俺はほら、大雨の時に、こいつ追いかけてって。離れで、『鬱陶しい』って殴られてわかったんだよね」
殴っ!?
(幼なじみにまでっ……本気で容赦ないな、紅騎さんてば……)
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