龍のシカバネ、それに月
6
……まさか。
そんな恐ろしいことって。
自分が考えたことのせいか、薬のせいかわからないけど。
胸がどきどきしてきた。
鼓動が激しい。
「ふ、…っ」
朋哉さんの手が、内腿に触れた。
指の腹でそっと触れていく。
その感じは口腔を撫でられるのと同じように、下腹を疼かせた。
やんわりと撫でられるもどかしい感覚が、窄まりの表面をゆっくりと撫でた後、上へと移動する。
少し痛む気のする性器の根元から膨らみをたどって、朋哉さんは呟いた。
「まだ……体ができていないな。三龍らは本気で優月を匣姫に使う気がないのか……?」
ぼんやりしてきた頭が朋哉さんの呟きをくり返す。
(体が、できてない……って……)
まだ“した”ことがないってことを言ってるんだろうか。
それとも、別の?
できてなければ匣姫として機能しないっていう意味……だよね、今の……。
「これを使って、解してやりなさい」
また新たな瓶が、今度は僕の足元にいる龍に手渡された。
体が熱っぽくなってきたせいか、涙液が浮かんでよく見えない。
龍は瓶の中身を手に取りながら、僕の両膝を割って、体を入れてきた。
膝が重くて動けない。
膝の裏を押さえつけられ、腿を胸に押さえこまれた姿は、自分でも考えたくない。
露わに晒した最奥に息がかかるほど、龍が近い。
二番目の液体は、冷たくも熱くもなかった。
人の温度に調整されたそれは、何かが下腹に垂らされた、そんな感覚以外ない。
「っひ…!?」
いきなり窄まりに指先を挿れられて、体が跳ねた。
緩んだ視界に、朋哉さんが覗きこんでいるのが見える。
「力を抜いて、可愛い優月。南龍のものになるんだからね……そして一緒に、あるべき場所へ帰ろうね……」
「……貴方は……誰…?」
朋哉さんはうっすらと笑った。
愛しい者を見るような目をして。
本当は少しだけ、思い出したことがある。
北龍が朋哉さんを呼ぶ名は、『朋哉』じゃなかった。
だけど、それが事実だと思いたくない。
「い…嫌…。僕は…」
行かない。
もう、青鷹さんのそば以外にはどこにも行かない。
せわしない息の音がするのは自分のものだろうか。
「っん、ぁ、…ひっ…」
それに混じって、淫靡な水音がし始めて、下腹の感覚を封じるように、まぶたを閉じた。
涙が、こめかみをたどり落ちて行った。
数時間ぶりだな、と笑う北龍頭領 八神影時の手に輝く光を見ながら、本当にそうだと思った。
落下していく時、小さくなる北龍を見て、当分会うことはないと思ったのに、またこうしてすぐ対峙することになるとは。
良いにつけ悪いにつけ、互いに奇妙な縁があるのだろうか。
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