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龍のシカバネ、それに月
6

 途中で言葉が途切れてしまったのは、蒼河さんの手が腰を撫でたからだ。
 さらさらした指が肌の上を滑り降りていく。
 下衣を緩める衣擦れの音が、夜の闇に響いている。
 壁に背中を預け、蒼河さんの肩に腕を回しながら、それほど冷たくない潤滑剤を感じた。
 下腹を降りていく蒼河さんの指が、次第に体温を高めていく。

「…っ…ん…」

 吊るし灯篭の飾りが風に揺らされているのか、しゃらしゃらと儚い音が聞こえてくる。
 脚の付け根を撫でる蒼河さんの指が、同じように儚い水音を立てた。
 薬を載せた指先が、ゆっくりと中を押し開いてくる。

「ちゃんと、息して」

「……は、い…っ…」

 蒼河さんの肩に乗せた指に、力が入ってしまう。
 意識的に呼吸を繰り返していると、視界にきらきらしたものが見えた。
 腕が肩から落ちそうになって、蒼河さんが焦ったみたいな声で、もう一度「息して」と言った。……ような気がした。

(疲れてるのかな……)

 普段より感覚が鋭い。南龍屋敷の離れに来てから毎晩、蒼河さんは通ってきてくれる。
 匂いを抑える薬を僕の体にくれるために。
 紅騎さんに知られたらまた叱られそうだけど、未だに僕は自分ですることができなくて。
 痛みを感じることはないものの、その感触にはまだ慣れることができないでいる。

「……入ったよ。優月」

「あ、りがとう……ございました……」

 力が抜けて、もたれたままの背中が壁をずり落ちていく。
 着乱れた腰を腕で支えてくれながら、蒼河さんはこめかみや顎に唇を寄せた。

「蒼河さ……」

「……そんな目で見んな……」

 唇を受け、二人で抱き合いながら畳の上に落ちていく。
 重なったまま、蒼河さんの指がさっきまで入っていた場所の、その口を撫でる。
 空いた手で、自らの前を寛げた。

「蒼河さん……だ、めですっ……」

 僕のものとは比べものにならない質量を蒼河さんは大きな手に緩く握りこむと、同じスペースに僕のものを入れた。
 大きな手も、密着する蒼河さんのものも熱くて。
 触れるだけで、ぶるっと震えが来る。

「蒼河さん…何を…」

「ふうん。青鷹はこういうの、しねえのな」

 こういうの……?
 潤滑剤と自らの滴りが混ざりあって、蒼河さんの手の中で鳴る。

「っ、ふ……」

 どちらのものともつかない吐息が水音の隙間に入り込んで、さらに熱が高まった。

「んぅ……『は』…」

 乾いた唇が、勝手に言葉を紡ぐ。
 無意識だった。

「……『青鷹』……?」

 蒼河さんの声に、はっと我に返る。
 青鷹さんの名前を口にしそうになっていた。


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