龍のシカバネ、それに月
7
寝間着の下衣を脱いで下腹にも垂らしたけど、前も後ろも自分では触れていない。
それでも息が乱れて、熱で身体中がだるく重いのは、腹にはびこる影のせいだ。
(早く、なんとかしなくちゃ……)
発熱のせいで肌に触れるローションが、指で触れてもいないのに暖まってきた。
ゆるりと下腹を垂れて、脚の付け根を滑り降りていく。
その動きにぞわぞわと鳥肌が立った。
「っ…」
ただローションが滴ろうとしているだけだ。
それなのに全身の感覚がそこに集まったみたいに、肩まで震えた。
恐る恐る、滴る液体に触れる。
発熱のせいかローションのせいかわからないけど、シャツの裾に隠れた前は芯を持ちはじめているようだった。
その先が、じわっと濡れてシャツに円い染みを作っているのが、月明かりで見えた。
大丈夫だ、と思う。
体が快感を拾おうとしているなら、大丈夫。
(これは青鷹さんにしてもらってたことと同じこと……)
指を下ろして、柔らかな双袋を撫でて、奥に潜む後孔へと滴りを導いていく。
濡れた指の腹が、きゅっと閉じた口に触れると、緊張した息が漏れた。
(この中に、影がある)
未だ自分で自分の中がどうなっているのか、わかっているわけじゃない。
もしかしたら灰爾さんよりもわかっていないのかもしれなくて。
指先を中心に当てて、力を込めた。
「んっ…!…」
ゆるゆると回りの肉を宥めるように押し開いて、それでも第一関節を挿れるのに、汗を滴らせた。
熱くてうねるようにして動く内壁は、ローションのせいなんだろうか。
初めて感じる自分の中に戸惑っていると、突然、枕元に置いていた携帯が鳴った。
「っ!!」
吃驚して、指を引き抜いた。
ちゅぷ、と水音を鳴らして静かに元の形にすぼまっていく後孔は、食むものを失ったからかひくひくと独りでに動いている。
自分の意志とは無関係に動いているように思える場所をなるべく視界から遠ざけようとしてか、両膝を立てて膝頭を擦り合わせる。
深呼吸を1つしてから、携帯を取り上げた。
「もしもし……」
乾いた喉が、掠れた声を絞り出す。
相手は紅騎さんで、硬質で、しかし性急な声が「やってる?」と問うてきた。
背後でざわめく人々の声が聞こえる。
どういう状況で電話をかけてきているんだろうと思いながら、はい、とだけ答えた。
「指何本まで入るようになった? 影には触れた?」
ストレートな質問に、部屋に僕しかいないのに周りに視線を泳がせてしまう。
「まだっ……そこまでじゃありません……」
何ぬるいことやってんの? と呆れたような声が追い打ちをかけてきた。
小さなため息が携帯を通して伝わってくる。
「紙袋、ちゃんと見た!? ローターにローション垂らして突っ込んで、しばらく――むぐっ!?」
口許を封じられたような音がした後「大声で何言ってんの!」という灰爾さんの声が聞こえた。
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