龍のシカバネ、それに月
7
「北龍を追いかけて上っていったのは見えた。先の匣姫がいたのを見たか見ていなかいはわからないが。深追いするなと言ったのが聞こえなかったとしても、自己判断で帰るはずだ」
でなきゃ頭領後継とは言えない、と続く。
(上って……? ……)
嫌な胸騒ぎがした。
頭領後継。
そうだ、青鷹さんは頭領後継だ。
他の龍を見捨てるわけがない。
「どうして、ここが……」
携帯、と短く帰ってくる。
「電源入れたろ。あれで場所がわかった。どうしてここに来たのかとか、聞きたいこといっぱいあるけど1つだけ言っときたいのは」
指がずるっと抜けていく。
泥みたいな影が、廊下で白い煙を吐いている。
そしてまた、濡れて熱くなった指が入ってきた。
「…んっ、…ひ…」
携帯の電源って使う時だけ入れるんじゃないんだよ?
この場にそぐわない灰爾さんの暢気な声にほっとしたせいか、僕はそこで意識を手放した。
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