[携帯モード] [URL送信]

捧げもの
inevitably future
交じりあう
混じりあう
混じり合ったら、俺はお前のものなのに






「すごいなぁ…」
「せやなぁ」

一枚の絵を見て俺たちはため息をついた
空の青と花の黄色が綺麗に混じっていた

制作者名は『千歳千里』

「…俺、ちょっと」
「ん?千歳に会いに行くんか」
「ん…」

そか、と笑った謙也と別れて千歳のもとに向かう。
多分、美術室だろう

「…」

やっぱり。千歳は美術室にいた
空がよく見える窓の近くに座り込んで、絵を描いていた。

「…白石?」

千歳が気がついて俺を見てくれた。
その目は優しい

「どうかしたと?こっち来なっせ」
「ん…」

俺は千歳に言われるままに、千歳の傍に座った。
窓から光が差し込んで二人の影が並ぶ

「絵、描いてたん?」
「うん。」
「見た。綺麗やった…」
「……俺は、白石の絵の方が綺麗やったと」

笑った千歳
だけど悲しくなった。
俺には千歳みたいな独創性も、あんな色を出すことも出来ない。

「…千歳」

自分の絵と千歳の絵が並べられてるだけで思い知らされる。
才能の違いを

「白石?」
「……羨ましい」
「ん?」
「千歳が羨ましい」

千歳が羨ましくなった。
千歳の指がゆっくりと髪を撫でる
俺の好きな仕草

「俺のこと、羨んだらいけんよ」
「…でも」
「俺は白石が羨ましか」
「なんで」
「白石は俺よりも綺麗やけん」

嘘や。
だけど、言えなかった。

「…なぁ、千歳」
「ん?」
「このまま一つになれたらええのに

千歳の肩に頭を預けて、手を空に伸ばした。掴むにはあまりにも短い

「絵の具みたいに全部、混じればええねん。俺とお前」
「俺は嫌」

ぎゅっと千歳の手が俺の手を握りしめた

「白石のいない世界に俺は生きれん」
「なんやねん、それ」
「本当の事ばい」
「…」
「一緒になって、白石がいるって分かっても、その世界には白石が隣におらん。」

千歳の言った事を想像した
千歳がもしも俺の中に溶けて、一つになれたとしても、一緒だと分かっていても隣には誰もいない

…孤独な世界

「せやな…寂しいな…」
「ん…」

だけど、この世界もまた不安定でいつか隣に千歳がいなくなる日が来るんじゃないかって不安

「……白石、好いとう」
「…うん」
「白石を置いていかん。約束する」
「…うん」
「やけん、不安がらんでよかよ」
「…っ…うんっ……」

俺は、ゆっくりと唇を重ねた




それから数週間して、俺はまた人ごみの中にいた。
千歳の絵がまた賞をとったらしい

今回の絵は、不可思議な色の空に舞い散る花びらとその真ん中に咲く一輪の白い花

題名は『必然的な未来』

「白石」
「・・・あほ」
「へ?」

声をかけてきた千歳を見て、俺は顔をそらした

「白石?」

心配そうに見つめてくる千歳をもう一度見て、ため息をついた。仕方ない

「千歳、好きや」
「・・・俺も、好いとうよ」

くすくすと笑って、千歳と額を合わせた




交じり合わなくてもいいから
その瞳に未来永劫、映していて


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!