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君の終焉を

勢いよく開けた扉の先。

真っ先に目に飛び込んできたものは、
あまりにも変わり果てた、愛しき人の姿だった。




「由…貴…?」

震える足でゆっくりと彼に歩み寄る。

ノイズの中聞こえる弱々しい呼吸。

無数の傷、血の滲んだ包帯、そして体に繋がれたいくつもの管。

その全てが事故の悲惨さをものがたっていた。

連絡があったのは一時間ほど前。

自動車との交通事故で大怪我を負い病院に運ばれたと聞いた。

しかし、予想以上に残酷な現状に頭の中が真っ白になる。

端の切れた唇は薄紫に変色し、傷だらけの肌は透き通るほど青白い。

「由…貴…?」

呼びかけに反応し、微かに開く瞳。

「ゆぅ…ちゃ…ん?」
「由貴…っ!」
「ゆう…ちゃん…」

嬉しそうに唇の端がピクリと反応する。

しかし焦点はあっておらず、
よく見ると目の中が赤く染まっていた。

「由貴…目が見えないのか?」

コルセットで固定された首が、微かに縦に動く。

「ごめ…ん、…僕、…死ぬみ…たい…」
「馬鹿っ!…死ぬわけないだろ…」
彼の手をそっと掬い、自らの頬に重ねた。

いつもなら暖かいはずの掌が、今は別人のもののように冷たい。

「いままで…あり、がとう…」
「何言ってんだよ…これからがあるじゃないか」

しかし、由貴は、弱々しく首を左右に振り、儚げに微笑むだけ。

「ゆ……ちゃ…」

少なくなる、心拍数。

浅くなる、呼吸。


そして、薄れてゆく体温。


「やだ…やだよ由貴…」


俺を置いていかないで。


死ぬなんて言わないで。



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