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始まる終わり

あの男が「あとでまた会おう」と言い残してどこかへ向かったのを見送ったあと、俺は銀に連れられて本部内を案内されていた。


まだそんなに歩いたわけではないが、とても広いことがわかる。


そして、ところどころに監視カメラが設置されているのが目に付いた。


監視体制は、万全だな。

....やりすぎなくらいに。



「こっちはねー、談話室だよ。この部屋から自分の部屋に入れるようになってるの」


銀に繋がれた手は、離れる様子はない。


手を引かれながら、俺はずっとあの男の言葉を考えていた。


『君の名前は、今日から紅蓮だよ』


紅蓮....

俺には別の名前があるんだ。

親からもらった大事な名前を簡単に変えることができるわけない。


もうたったひとつになってしまった...俺だけの、親の贈り物だ


「レンレン?聞いてる?」


「あ、あぁ、悪い。というか、レンレンってなんだ?」


「あだ名だよ!かわいいでしょ?」


....本当に、こいつは男....だよな?

大きい目に少したじろいでしまう。

同世代の女性なんて、妹くらいしか関わったこともないし。


「かわいいか、と言われてもよく分からないが....なぜ、名前を変える必要があるんだ?」

すると、銀はピタ、と動かしていた足を止めた

「銀?」


「....ペットと一緒だよ」


「ペット?」


「ペットは飼い主に名前をつけてもらうでしょ?それとおんなじ」


銀が、すこし悲しそうな顔をしてこちらを見た。

「僕もね、銀って、ユアン様につけてもらったんだぁ」

「ユアン様?もしかして、さっきの男か?」

「うん。僕らの恩人だよ。レンレンも、きっと好きになるよ。....あの人は、優しいから」

....ユアン様、か


とりあえず、俺たちの上司だということはよくわかった。


そして、ソイツに絶対的な忠誠を捧げなくちゃいけない、ってことも。





まだ、あったばかりだったけど





銀を、見ればわかった




「ここは食堂!今はごはん時だからみんなもここにいるんじゃないかな?行こっ!」

グイッ

「ちょっ、銀」

いきなり強い力で引かれ、段差があることに気づけずつまづいてしまった。

ドン!

そのせいで人にぶつかってしまい、急いで顔を上げる。

「わ、悪い...」

「あれ?白りん♪起きるの早いじゃん。どうしたの?」


すると、ぶつかってしまった青年は俺から離れて、ぱっと目を逸らした

....無視かよ



「別に。普通。」

「いつもお昼に起きてくるくせに〜」

銀が普通に話している。

....二人は仲は悪くはないようだけど。

俺が二人を見ていたら、白が俺と急に目を合わせてきた。

この人は、とても綺麗な顔立ちをしていたのに、気づいた


儚げで、朧げで。



消えてしまいそう




左に流している髪の毛のせいで、あまり顔が見えなかったのだ


いや、美しい白髪に目を奪われていたのかもしれない



「...誰?」

俺を指さして銀に聞いた。


「もー、今日から零番隊に入る子が来るってユアン様が言ってたでしょお」


「零番隊に配属されることになった。レン....じゃない、紅蓮だ」


「....白(ハク)だ。」


「白りん、自己紹介短い〜」


「....よろしく」


「新兵だから、いたらないところもあると思うけど、よろしくたのむ」


「....」


「白りん、緊張してるみたい。ちょっと人見知りなんだよね〜。慣れたら、もっと話せるようになるよ!」

銀が、話の続かない俺たちを和ませてくれた。


こんなやつが、戦闘用軍人だなんて、すこし信じられない。


もちろん、白もだけど。

俺と同じくらいの身長とはいえ、こんな、華奢な青年が戦闘のエキスパートだなんて。


「....銀、中にみんないるから。紹介、してあげて」

「うん!わかった!」


銀がまた手を引いた。

俺は腕を引かれながら振り向いて、白をみた。

「さっき、ぶつかって悪かったな」



もう、俺たちとは反対方向を向いて、歩き初めていた白の背中を見ながら、そう言ってみた。


「....別に」







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