11
一人きりの屋上に、足音が響く。
背後で止まった足音は、
「まひる……」
千裕ではなく、雪哉センパイのもの。
朝から、いつでもかけれるように開いておいた雪哉センパイの番号を、まさかこんなことで使うことになるなんて。
「どうした?」
雪哉センパイのほうを向くと、急いで来たのか、めずらしく髪が乱れていた。
「よく、わかんないんです」
未だにハッキリしない頭でさっきのことを思い出す。
好きって言われて幸せで
だけど瑞穂ちゃんがケガしたって聞いて、千裕は私を置いて瑞穂ちゃんの元に走っていった。
「朝瑞穂ちゃんが言ってたことって、こういうことやったんかなって思って……」
こんなことで呼び出してごめんなさい、って言うと雪哉センパイは困ったように顔を歪ませた。
「こんなこととか言うな。お前が傷ついてるだけで、大事件だろ」
雪哉センパイはゆっくり、私のほうに歩いてくる。
「まひる」
「……っ」
「お前を、生徒会に入れた理由、聞いてきたよな?」
確かに聞いたけど、それがどうしたんやろう?
「将行が持ってた写真見て、一目ぼれした」
え……
「好きだ、まひる」
そう言って雪哉センパイは、私に触れるだけのキスをした。
逃げることもできたんだろうけど
私はなぜか、逃げることができなかったんだ……
*
[*前へ]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!