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「あら、靴盗られたの?かわいそう」


瑞穂ちゃんは私の下駄箱の中を見ると、心のまったくこもってない声で言った。


「瑞穂ちゃんが盗ったの?」


私が恐る恐る聞くと、彼女はニヤリと笑った。


「さぁ?どうかしら」


その笑顔にイライラする。


なんで、こんなこと……っ



「ねぇ、まひるちゃん」


顔にはりつけた笑みをはがすと、その下は恐ろしいほどの無表情だった。


「千裕はね、結局私を選ぶの」


おもしろいほどに、私の胸はズキズキと痛む。


「すぐにわかるわ。千裕は、私のモノだってことが。」


彼女はそう言って笑うと、玄関を出ていった。



「まひる……」


走ってきたのか、少し息を切らしている会長に、目を向ける。


今の、聞いてたのかな。


「あは、こういうの、宣戦布告って言うんですかね?」


そう言って笑うと、気が抜けたのか座り込んでしまった。


「まひる!!」


会長は慌てて私を支えに来る。


そしてペタッと座り込んでしまっている私の顔を自分の胸に押しつけた。


「会長……?」


「俺、見てないから。」


「……っ」


それって。


誰も見てないから『泣いていい』ってことですか?


「う……っ、うぅ」


初めてのイジメも。


瑞穂ちゃんの言葉も。


自分で思ってた以上に、ショックやったみたい。


私は会長の腕の中で、声をあげて泣いた。



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